名草の巨石群

名草の巨石群

名草の巨石群（なぐさのきょせきぐん）は、栃木県足利市名草上町に広がる、国の天然記念物に指定された地域です。ここには、黒雲母花崗閃緑岩からなる巨石が多数あり、自然の風化作用によって形成されたユニークな景観が魅力です。指定地は名草厳島神社の境内にあり、深い木立の中に位置した谷間の沢筋にあることで、人々の信仰心に寄り添っています。

この地域の巨石群は、岩石が風化して生じたもので、特に黒雲母花崗閃緑岩の特性が色濃く反映されています。粗い節理を持つこの岩石は、自然の雨水や水流の浸食によって、母岩の堅固な部分、いわゆるコアストーンが球体や直方体の形状で残ることで形成されました。この名草の巨石群は、多くのコアストーンが集積しており、弁天沢という小さな沢筋の中に群をなしています。

一般的に、花崗岩質の岩石は方状節理に沿って風化が進むため、玉ねぎ状風化と呼ばれる特殊な形状を呈することがあります。名草の巨石群は、この風化現象が非常に良く保存されているため、学術的にも貴重な地質学的資料として評価されています。このため、1939年に国の天然記念物に指定されました。当初は「名草村の巨石群」として認定されましたが、1954年に名草村が足利市に編入されたことを受け、1957年に現在の名称に変更されました。

名草厳島神社と巨石群

名草の巨石群は足利市の北部に位置し、名草川を遡ると名草厳島神社があります。この神社は、弘法大師が弁財天を祀ったことから始まったと言われ、地元の人々に長年にわたり信仰されています。この地域での歴史的信仰から、巨石が弁財天として崇められていたという伝承もあります。

神社へ進む参道は、朱色の鳥居をくぐり、弁天沢沿いに約10分のところに天然記念物として指定された石碑と共に巨石が現れます。これらの巨石はそれぞれ「弁慶の割石」「お供石」「太鼓石」「お舟石」などと呼ばれ、特に「弁慶の割石」はその形状から有名です。高さ約3メートルのこの巨石は、仁王立ちの弁慶が杖で割ったとの伝説が語り継がれており、多くの人々に知られています。

また、「お供え石」と呼ばれる高さ11メートル、周囲30メートルの巨石も存在し、頂部にお供え物のような石を載せる形をしています。この石の下には「胎内めぐり」と名付けられた小さな隙間があり、訪れる人々はここを通り抜けて身を清める行為が行われています。

神社本殿からさらに300メートルほど上がると、杉木立の中に巨石が再び姿を現し、典型的な風化による風景を形成しています。名草の巨石群が持つ自然の形成美は、訪れた人々に深い感動を与えます。

足利岩体の地質

足尾山地は、古生代から白亜紀にかけて形成された多様な地質を持ち、名草の巨石群はその一部を成します。名草の巨石群を形成している花崗岩は、「沢入型」と呼ばれる後期白亜紀の花崗閃緑岩であり、約1.5キロメートルの範囲にわたって広がっています。この地域の地質学的な研究も進められており、岩体周辺の変成作用や変成温度の推定が行われています。

大规模の黒雲母花崗閃緑岩やその露頭が他のエリアに点在することから、名草の巨石群は地質的にも重要な参照点とされています。風化が進む中でも、原状が維持されているこの場所は、今後も学術的な研究が続く貴重なフィールドであると言えるでしょう。

交通アクセス

名草の巨石群は交通アクセスも充実しています。栃木県足利市名草上町4990が所在地で、北関東自動車道の足利インターチェンジから車で約20分の距離にあります。手軽に訪れることができ、地域の自然と歴史を感じる貴重な体験を提供してくれるこの場所を、多くの人々に知ってもらいたいものです。

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