名鉄清洲線

清洲線：短い歴史に刻まれた愛知のローカル線

清洲線は、愛知県清須市にあった名古屋鉄道（名鉄）の鉄道路線です。わずか1キロメートルほどの短い路線でしたが、その歴史は、地域の変遷や交通事情の変化を反映しており、興味深いものです。

開業までの道のり：清洲の町と鉄道

1886年、東海道本線に清洲駅が開設されましたが、1906年には西枇杷島に移転しました。この移転により、清洲町は鉄道駅から遠くなってしまいました。新たな鉄道への要望が高まる中、名古屋電気鉄道（名鉄の前身）による津島線の建設が決定します。清洲町では、津島線から分岐し、町まで繋がる路線の建設を強く要望しました。

名古屋電気鉄道は1912年、軌道条例による路線敷設の特許を取得。その後、軽便鉄道法による免許に変更されましたが、津島線の建設に注力したため、免許は失効してしまいました。しかし、用地買収は既に完了していたため、免許を再取得。そして1914年9月22日、須ヶ口駅から清洲駅までの区間が開通しました。これが、清洲線の始まりです。

清洲線の路線と駅

清洲線は、五条川と美濃路の東側を通るルートで建設されました。終点の清洲駅（後に清洲町駅に改称）は、五条川を渡る橋の建設費を削減するため、町に近接した五条橋の東南に設置されました。

路線には、丸ノ内駅と試験場前駅の2つの駅がありました。営業キロはわずか1.0キロメートル、全線単線の非電化路線でした。

名岐線への編入と廃止

1928年、清洲線の一部区間（須ヶ口～丸ノ内間）が複線化され、名岐線に編入されました。残った丸ノ内～清洲町間は、太平洋戦争中の1944年6月10日、不要不急線として休止、そして撤去されました。戦後、復活することはなく、1948年8月3日に正式に廃止されました。

清洲線の歴史的意義

清洲線の歴史は、地域の交通事情の変化を如実に物語っています。東海道本線の駅が移転したことで生じた清洲町の交通不便を解消しようとする地域住民の強い要望、そして、その要望に応えるかたちで建設された路線。しかし、時代の流れの中で、わずか30年余りの歴史に幕を閉じました。短い期間でしたが、清洲町の発展に貢献したことは間違いありません。また、清洲線の歴史は、戦時下の鉄道政策が地方のローカル線に与えた影響を考える上でも重要な事例と言えるでしょう。

年表

1912年1月26日: 名古屋電気鉄道が清洲線の敷設特許を取得
1914年9月22日: 須ヶ口～清洲間が開業。丸ノ内駅、試験場前駅、清洲駅が開設
1921年7月1日: 名古屋電気鉄道が名古屋鉄道に路線を譲渡
1928年4月10日: 須ヶ口～丸ノ内間が名岐線に編入
1934年2月24日: 清洲駅を清洲町駅に改称
1944年6月10日: 丸ノ内～清洲町間休止
1948年8月3日: 丸ノ内～清洲町間廃止

駅一覧（廃止時点）

須ヶ口駅
丸ノ内駅
清洲町駅

参考文献

名古屋鉄道広報宣伝部（編纂）『名古屋鉄道百年史』名古屋鉄道、1994年
井戸田弘『東海地方の鉄道敷設史』2巻、井戸田弘、2006年
* 今尾恵介（監修）『日本鉄道旅行地図帳』7東海、新潮社、2008年

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