吹田市民の歌

吹田市民の歌

「吹田市民の歌」は、日本の大阪府吹田市によって公式に定められた自治体歌です。この歌は、吹田市が市制30周年を迎えた1970年、そして市内の千里丘陵を主会場として開催された日本万国博覧会（大阪万博）という記念すべき出来事を祝して制定されました。作詞は桑形淑氏、その詞に詩人の竹中郁氏が補作を加え、作曲は石丸寛氏が担当しています。

旧市歌から現行歌へ

現在の「吹田市民の歌」が誕生するまでには、前史が存在します。吹田市では、市制施行と同年の1940年（昭和15年）に、既に一度市歌を制定していました。これは大阪毎日新聞社の後援を得て、市章のデザインと市歌の歌詞が懸賞募集されたもので、入選作を基にした「吹田市歌」でした。作詞は垂水正保氏、作曲は正野勇次郎氏が手がけています。しかし、この旧市歌は3番の歌詞において、当時が皇紀二千六百年に当たることを強調するなど、皇国史観的な色彩が濃い内容でした。このため、第二次世界大戦終結後は公の場での演奏が行われなくなりました。また、太平洋戦争中の1943年（昭和18年）には、吹田市翼賛壮年団が「決戦吹田市民の歌」を選定したことも記録に残されています。

新市民歌の制定プロセス

旧「吹田市歌」が公的に演奏されなくなった状況を受け、吹田市は新たな市民歌の制定を決定しました。これは、上述の通り1970年の市制30周年および大阪万博開催を記念する事業の一環として位置づけられました。新しい市民歌の制定にあたり、市は歌詞の懸賞募集を実施しました。この募集には83篇の応募があり、その中から選ばれた入選作を、著名な詩人である竹中郁氏が補作するという形で歌詞が完成しました。そして、この歌詞に石丸寛氏が曲をつけ、1970年4月11日をもって正式に「吹田市民の歌」として制定されたのです。

制定時には、市の企画により自主制作のソノシートが広く市民に頒布されました。このソノシートのジャケットには、大阪万博のシンボルである太陽の塔を下から見上げた印象的な写真が使用されており、当時の記念事業としての側面がうかがえます。

現在の活用と関連楽曲

現在、「吹田市民の歌」は吹田市役所本庁舎において、毎日の始業時および終業時に演奏されており、市職員や来庁者に親しまれています。

吹田市に関連する楽曲としては、「吹田市民の歌」制定と同時期に、万博開催を記念して選定された市民愛唱歌「ここに千里の丘がある」があります。この歌は、作詞を岩谷時子氏、作曲・編曲をいずみたくさんという著名な音楽家が手がけました。さらに、1973年（昭和48年）に市制35周年を記念して、吹田まつりの中で発表された市民音頭「吹田音頭」なども存在し、それぞれが市の歴史や文化を音楽の形で伝えています。「吹田市民の歌」は、これらの楽曲の中でも市の公式な象徴としての役割を担っています。

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