吾妻 (装甲巡洋艦)

吾妻 (あづま)

吾妻は、日露戦争でその名を馳せた日本海軍の装甲巡洋艦です。この艦の名前は、福島県北部に位置する吾妻山に由来しています。吾妻は、フランスのロワール社で建造され、大日本帝国海軍が日露戦争の前に購入した初期の装甲巡洋艦の一隻です。艦の設計はフランス式であり、特に六六艦隊の拡張計画に基づいて整備された艦として類を見ません。

艦型とデザイン

本艦は平甲板型船体を持ち、当時の装甲巡洋艦の一つである「八雲」と似た外観をしておりますが、フランス式の設計が施されているため、他の艦艇とは一線を画しています。この時代のフランス艦船は排水量に対して長い船体を持っており、吾妻も例外ではありません。特徴的には、缶室が二つに分けられ、前後に配置されているため、煙突の間隔が広くなっています。

また、吾妻は他の艦とは異なり、二重構造の煙突と強制通風装置を採用しています。この設計により、艦内に煙や火災を引き込むことを防ぐ工夫がなされています。さらに、船体は高い乾舷を持ち、波に強い形状が特徴的です。主砲には新型の「20.3cm（45口径）砲」が楕円筒形の連装砲塔に装備され、艦首には衝角が設けられています。

兵装

吾妻の主砲は、旋回範囲が150度、仰角30度の能力を持つ20.3cm砲で、射程は最大18,000メートルに達することができます。副砲には15.2cmの単装砲が配置されており、この砲も高い弾速を誇ります。さらに、水雷艇に対抗するために8cm速射砲も装備されており、合計で多くの火力を誇る艦となっています。

機関と性能

吾妻は、最新型のベルヴィール式の石炭専焼缶を搭載し、直立型三段膨張蒸気機関によって推進されています。これにより、17,000馬力という高い出力を発揮し、航続距離は約7,000海里といった当時としては驚異的なものでした。機関員たちが経験の中でベルヴィール缶の扱いを習得し、第一次世界大戦時にもその性能を証明しました。

艦歴

1898年にロワール社で建造が始まり、1900年には日本に回航されました。吾妻は日露戦争の際、上村艦隊の主力艦として数々の戦闘に参加し、その力を示しました。1912年からは練習艦として使用され、戦後には一等海防艦に編入されるなど、長い艦歴を誇りました。1942年に練習特務艦に編入され、1944年に除籍された後、解体されています。

現在、吾妻の主錨は京都の乃木神社に安置されており、かつての名艦の面影をしのぶことができます。

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