呉市二河野球場

呉市二河野球場（鶴岡一人記念球場）

広島県呉市の二河公園に佇むこの野球場は、呉市が所有し、公益財団法人呉市体育振興財団が指定管理者として運営を担っています。地域に根差したスポーツ施設として、長年にわたり多くの人々に利用されています。

命名権による呼称

2019年4月26日、呉市に本社を置く大之木建設株式会社との間にネーミングライツ契約が締結されました。これにより、同年5月1日から2024年3月31日までの期間、「鶴岡一人記念球場」の名称が使用されています。この名称に企業名ではなく、野球界で偉大な功績を残した鶴岡一人氏の名前が冠された背景には、鶴岡氏が呉出身であることに加え、大之木建設の創業者である大之木一雄氏が広島商業学校で鶴岡氏の1年先輩であった縁があります。さらに、鶴岡氏の次女が同社に勤務していたこと、鶴岡氏自身も南海ホークスの監督退任後に逝去まで非常勤取締役を務めるなど、家族ぐるみの深い交流があり、鶴岡氏の持つ幅広い人脈が会社の発展に大きく寄与したという経緯が関係しています。

施設の歩みと特徴

球場は1951年に完成し、その後1993年に全面的な改修が行われました。収容人数は内野が9,900人、外野が5,100人で、合計15,000人を収容可能です。夜間照明設備として6基の照明塔が設置されており、ナイターゲームの開催が可能です。グラウンドは両翼97.5メートル、中堅122メートルで、内野はクレー舗装、外野は天然芝となっています。スコアボードは磁気反転式を採用しています。

プロ野球との関わり

この球場は過去、プロ野球のオープン戦や公式戦の開催地として利用されてきました。特に1993年から2002年にかけては、広島東洋カープの試合が年に1試合程度開催されています。1999年以降、公式戦の開催が一時途絶えましたが、2007年8月21日に8年ぶりに広島対横浜戦が開催されました。以降は、築年数が経過し老朽化が進んでいた福山市民球場に代わり、カープ主催の一軍公式戦が多く組まれるようになっています。2007年から2014年までの8年間では、2011年を除いて毎年公式戦が開催されていました。また、1954年に発足した新日本リーグにおいては、広島カープの二軍にあたる広島グリーンズの本拠地でした。2011年の東日本大震災発生時には、プロ野球開催が延期された影響で、マツダスタジアムが使用できない日の広島カープの練習場としても活用されています。

キャンプ地としての歴史

瀬戸内海の温暖な気候に恵まれたこの地域は、過去に多くのプロ野球球団や大学のキャンプ地としても利用されてきました。特に、呉出身の鶴岡一人氏との縁から、南海ホークスが長年にわたりこの地でキャンプを実施していました。西鉄ライオンズも1953年にキャンプを行っています。広島カープも、現在の春季キャンプ地である日南へ移る前の1960年代初頭にはこの球場でキャンプを張り、日南に拠点を移した後も二軍は当地でキャンプを行っていました。プロ野球選手の入団テストが行われた場所としても知られ、大野豊氏の入団テストもここで行われています。鶴岡氏が監督を退任した後、南海ホークスは一時他の地域でキャンプを行いましたが、1981年にドン・ブレイザー監督が呉キャンプを復活させ、鶴岡氏を師と仰ぐ杉浦忠氏が南海最後の監督に就任した時代まで継続されました。ただし、ダイエーへの球団売却後の1988年秋季キャンプが、福岡ダイエーホークスとしての最初で最後の呉キャンプとなりました。杉浦監督時代には、当時文化人として活躍していた長嶋茂雄氏が激励のために小型飛行機で派手に訪れたというエピソードも残っています。国内球団だけでなく、1990年代には韓国野球委員会（KBO）所属の太平洋ドルフィンズ（後の現代ユニコーンズ）やサンバンウル・レイダースといった球団がキャンプを行った実績もあります。大学野球においても利用されており、近畿大学などが1996年から春合宿を張るなど、現在も活用されています。

その他

全国高等学校野球選手権広島大会の会場の一つとしても使用され、アマチュア野球の拠点ともなっています。鶴岡一人氏をはじめ、浜崎真二氏、藤村富美男氏、広岡達朗氏など、呉出身の著名なプロ野球選手の多くがこの球場近くで育っています。

交通アクセスと課題

交通は、JR呉線呉駅からバスまたは徒歩でアクセス可能です。広島バスセンターからは高速バス「クレアライン」経由でアクセスできます。しかし、プロ野球開催時における呉駅からの臨時シャトルバスや臨時列車の設定、無料駐車場の提供はありません。来場者は近隣のコインパーキングを利用する必要があります。近年、プロ野球公式戦は主に平日ナイターで開催される傾向にあり、試合終了が遅くなることで、呉駅発の最終列車（広島方面は23時台）に間に合わず、公共交通機関での帰宅が困難になる可能性があるなど、アクセス面に課題を抱えています。

（注：プロ野球開催記録の観客数は、2004年以前は概数、2005年以降は実数です。）

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