呼吸機能検査

呼吸機能検査：肺の機能を詳細に評価する検査法

呼吸機能検査は、患者の呼吸器系の状態を包括的に評価するための検査法です。肺疾患の診断、治療効果のモニタリング、予後予測など、様々な臨床場面で重要な役割を果たしています。 本検査では、病歴や身体検査に加え、スパイロメトリーなどの客観的な検査データを用いて、肺機能の障害の程度を詳細に明らかにします。医師だけでなく、臨床検査技師や理学療法士なども検査に関与します。日本においては、スパイロメトリーが呼吸機能検査の代表的な検査法として広く認識されています。

呼吸機能検査の適応

呼吸機能検査は、以下の様な様々な状況で使用されます。

[肺]]疾患の診断: 喘息、慢性閉塞性肺疾患]、[[嚢胞性線維症などの診断に役立ちます。
疾患の経過観察: 慢性疾患の進行状況や治療効果の評価に用いられます。早期の変化を捉えることで、適切な介入を迅速に行うことが可能です。
気道狭窄の特定: 気管支の狭窄の程度や原因を特定します。
気管支拡張薬の効果判定: 気管支拡張薬の投与による気道反応性を評価し、治療効果を確認します。
環境要因による肺への影響評価: 環境要因が肺機能に及ぼす影響を調べます。
術前検査: 手術を受ける患者の肺機能を評価し、手術の安全性やリスクを評価します。
* 神経筋疾患: 神経筋疾患患者では、呼吸筋の機能低下を評価することで、呼吸状態の把握、治療計画の立案、予後予測に役立ちます。デュシェンヌ型筋ジストロフィーなど、呼吸筋の機能低下が呼吸不全につながる疾患のモニタリングに特に重要です。

呼吸機能検査の種類と方法

呼吸機能検査には、様々な検査法があります。代表的な検査法を以下に示します。

スパイロメトリー

スパイロメトリーは、肺の空気の出入りを測定する検査です。努力肺活量(FVC)、1秒量(FEV1)、強制呼気流量(FEF)、強制吸気流量(FIF)、最大換気量(MVV)などの指標を測定します。これらの指標は、肺の弾性や気道の抵抗性を反映し、様々な肺疾患の診断や重症度評価に利用されます。測定された値は、喘息、肺線維症、COPDなどの状態を評価する上で重要な指標となります。また、運動や冷気、薬剤に対する気管支の反応性を評価するのにも用いられます。

ヘリウム希釈法

ヘリウム希釈法は、閉鎖式スパイロメーターを用いて肺活量を測定する検査法です。ヘリウムの拡散を利用して、肺の総容積を算出します。

窒素洗い出し法

窒素洗い出し法は、開放式スパイロメーターを用いて機能的残気量(FRC)を測定する検査法です。患者の肺から窒素を洗い出すことで、FRCを算出します。

プレチスモグラフィ

プレチスモグラフィは、ボイルの法則に基づいて、肺容積を測定する検査法です。様々な肺容積（一回換気量、予備吸気量、予備呼気量、残気量など）や肺容量（全肺気量、最大吸気量、機能的残気量、肺活量など）を測定し、肺の機能状態を総合的に評価します。

最大気道内圧

最大吸気圧(MIP)と最大呼気圧(MEP)を測定することで、呼吸筋の力を評価します。原因不明の肺活量低下や、呼吸筋力低下の疑いがある場合に有用です。

肺拡散能

一酸化炭素を用いた肺拡散能検査(DLCO)は、肺におけるガス交換能力を評価する検査です。拘束性肺疾患と閉塞性肺疾患の両方の評価に有用です。

気管支拡張薬への反応性

閉塞性障害が疑われる場合、気管支拡張薬試験を行い、気道収縮の可逆性を評価します。

運動負荷試験

6分間歩行試験など、運動負荷試験は、慢性肺疾患患者の身体能力や治療効果の評価に用いられます。

血液ガス分析

動脈血液ガス分析は、血液中の酸素分圧や二酸化炭素分圧を測定することで、呼吸機能の状態を評価します。特に、呼吸不全が疑われる場合に有用です。

呼吸機能検査のリスクと禁忌

呼吸機能検査は一般的に安全な検査ですが、めまい、息切れ、咳、気胸、喘息発作などの合併症が起こる可能性があります。また、最近の心臓発作、脳卒中、頭部外傷、大動脈瘤、または意識混濁のある患者には禁忌です。

検査手技と検査値の品質管理

検査前に身長、体重、喫煙歴、既往歴、服薬歴などを確認します。スパイロメトリーでは、正確な測定を行うために、複数回の測定を行い、再現性を確認します。

検査結果の解釈と臨床的意義

検査結果は、年齢、性別、身長、体重などを考慮した予測値と比較して解釈されます。専門学会が発表しているガイドラインが解釈の基準として用いられます。COPDの診断基準や重症度分類にも、呼吸機能検査の結果が用いられます。

最大気道内圧の計算式

最大吸気圧(MIP)と最大呼気圧(MEP)の正常値は、年齢と性別によって異なります。男性と女性のそれぞれの計算式が提示されています。これらの式を用いて計算された値を、正常値の範囲と比較することで、呼吸筋力の状態を評価することができます。

注記: 上記の情報は、一般的な説明であり、具体的な検査方法や解釈は医療機関によって異なる場合があります。医療に関する判断は、必ず医師などの専門家にご相談ください。

もう一度検索