命しらずのあいつ

『命しらずのあいつ』（いのちしらずのあいつ）は、1967年4月9日に封切られた日本の映画です。日活が製作を手掛け、主演は俳優の小林旭が務めました。監督は松尾昭典。

本作は、小林旭主演のアクション映画シリーズの第3作目に当たります。物語の中心となるのは、過去と決別し堅気の生活を送っていた主人公・都築浩介（小林旭）が、故郷である博多の地へ帰還するところから始まります。

彼が戻った博多では、かつて旧友の武原が身を寄せていた村岡組の状況が大きく変わっていました。組長である村岡が謎の変死を遂げた後、幹部の長谷部が組の実権を握っていたのです。

都築は、香港へ密かに売られようとしていた女性、向井明美を救出しようと試みます。しかし、その最中に発生した激しい爆破事件に巻き込まれ、都築は聴力を失うという重い傷を負ってしまいます。この予期せぬアクシデントが、彼のその後の行動に大きな影を落とすことになります。

聴覚を失うというハンディキャップを背負いながらも、都築は一連の出来事の裏に潜む真実を追い求めます。そして、彼は偶然立ち寄った銀行で、ある決定的な証拠を発見することになります。

それは、長谷部が村岡組長を焼き殺している瞬間を捉えたネガフィルムでした。この衝撃的な発見により、都築は村岡の死が単なる変死ではなく、長谷部による犯行であったことを知ります。さらに、この事実こそが旧友・武原が命を落とすことになった直接の原因であったことを突き止めるのでした。

聴力を失った主人公が、自身の正義感と旧友への思いから、強大な組織の内部で行われた凶行の証拠を掴み、真犯人に迫っていく過程が描かれます。障害を抱えながらも屈しない主人公の姿や、当時の日活アクション映画ならではのハードボイルドな世界観が作品の見どころと言えるでしょう。

主要なキャストには、主人公・都築浩介を演じる小林旭をはじめ、熊五郎役で東京ぼん太、北見役で内田良平、武原美津子役で広瀬みさ、倉田新次役で藤竜也、向井明美役で浜川智子（浜かおる）など、当時の日活を支えた個性豊かな俳優陣が顔を揃えています。また、長谷部役の江見俊太郎、茂木役の高品格らベテラン俳優も物語に深みを与えています。

スタッフ陣は、監督を松尾昭典が務め、脚本は甲斐久尊と松尾昭典が共同で担当しました。企画は友田二郎、音楽は嵐野英彦が手掛けており、その他にも技斗を高瀬将敏が、振付を漆沢政子が担当するなど、当時の日活作品を支えた多くのスタッフが本作に携わっています。

『命しらずのあいつ』は、シリーズ作品としての連続性を持ちながらも、主人公が抱える新たなハンデと、それによって引き起こされるドラマが加わることで、従来のシリーズとは一味違った展開を見せる作品となっています。旧友の死、組織の抗争、そして個人的な苦難が複雑に絡み合い、主人公の孤独な戦いを浮き彫りにしています。日活アクション映画のファンにとっては、当時の雰囲気を濃厚に感じ取れる一作と言えるでしょう。

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