和久田誠男

和久田 誠男

和久田誠男（わくた しげお）は、1941年に満州で生まれた演出家であり、東京都大田区にある古書店「天誠書林」の店主も務めました。彼の父は大相撲力士であり、力士の待遇改善のための運動「春秋園事件」を主導した天竜三郎（本名：和久田三郎）です。

来歴

彼の生まれた頃、父は満州国武道会の常務理事として活動し、相撲の普及に大きく貢献していました。和久田は早稲田大学文学部仏文科に在学中、自由舞台に参加し、多様な演劇活動に携わっていくことになります。1964年に文学座からの脱退メンバーによって設立されたグループNLTに関わり、演出助手や舞台監督としての役割を果たしました。

1968年には、NLTのメンバーが脱退し「浪曼劇場」を設立する際に参加し、舞台監督として三島由紀夫の作品を支援します。その後、三島由紀夫の死後に上演された「サロメ」は、彼が実質的な演出を担当することになりました。この時、和久田は三島が「サロメ」を自身の「劇場葬」としたかったのではないかという考えを持っていました。

1972年に浪曼劇場が解散した後、和久田は演劇活動から一旦離れ、1993年に大田区のジャーマン通りに古書店「天誠書林」を開業します。彼の古書店は2008年まで営業し、演劇と文学の愛情が融合する場所として、多くの人に親しまれました。

作品

和久田は数多くの舞台公演に関わってきました。例えば、以下のような作品で演出助手や舞台監督を務めた実績があります。

• - シラノ・ド・ベルジュラック（1964年）：日生劇場にて演出助手を担当。
• - 弱法師（1965年）：三島由紀夫による“近代能楽集”のナイター公演で演出助手。
• - 鹿鳴館（1967年）：NLT第6回公演で舞台監督を担当。
• - サロメ（1971年）：三島由紀夫追悼公演として演出補に指名され、実質的な演出を行う。

エピソード

和久田は「サロメ」の公演に関して、三島由紀夫から演出補に指名されたが、和久田の師である松浦竹夫が自分がその役割を果たすべきだと考え、和久田は一度その役から辞退するように判断しました。しかし、平岡瑤子夫人の強い希望により、和久田が演出補として公演に携わることとなったのです。この出来事が彼を芝居の世界から遠ざけるきっかけとなり、「サロメ」の成功を見届けた後、演劇から離れました。

また、和久田は三島と最後の打ち合わせをした日の夜、三島が神妙な様子で「寒い寒い」と繰り返していたことを覚えており、その背後にある精神的なものを感じ取ったと語っています。

まとめ

和久田誠男の舞台生活は、彼の父や三島由紀夫、そして古書店の経営と、多面的な人生を物語っています。彼の作品や活動は、日本の演劇界における重要な一部として、今もなお多くの人々に影響を与えています。

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