浪曼劇場

浪曼劇場の歴史と活動

浪曼劇場（ろまんげきじょう）は、1968年4月17日に成立した日本の劇団であり、約3年間にわたって演劇の世界に存在感を示しました。この劇団は、著名な劇作家である三島由紀夫をはじめ、いくつかの著名な演出家や俳優たちが関わり、彼の作品を中心に数多くの上演を行いました。

劇団成立の背景

浪曼劇場の誕生は、1963年に遡ります。この年、三島由紀夫や矢代静一、賀原夏子、中村伸郎といったメンバーは、文学座から去ることとなりました。その理由は、彼らが参加していた『喜びの琴』の上演が中止となったためです。この後、1964年にNLT（日本演劇協会）を結成し、独自の演劇活動を展開しました。

しかし、1968年にNLTの内部で路線対立が発生しました。賀原らが目指した海外の喜劇作品を中心とした演劇活動と、三島作品の上演を希望する中村らの意見の不一致が根本的な原因でした。この分裂を受けて、三島は新たな劇団の設立に着手し、ついに浪曼劇場を結成することを決意しました。

旗揚げ公演とその後の活動

浪曼劇場の旗揚げ公演は、1969年1月に行われました。三島本人の書き下ろし作品『わが友ヒットラー』が演じられ、その後も『朱雀家の滅亡』『サド侯爵夫人』『薔薇と海賊』など、三島の作品を多く上演しました。これらの公演は日本の演劇界に新たな息吹をもたらし、多くの観客を魅了しました。

三島由紀夫の自決とその影響

しかし、1970年11月25日に三島由紀夫が市ヶ谷駐屯地で自ら命を絶つという衝撃的な事件が発生しました。この事件は、浪曼劇場にとって非常に大きな打撃となりました。三島の死去が決定的な影響を与え、彼が精神的な支柱であったことから、劇団の存続に暗雲が立ち込めることとなりました。彼を偲ぶ追悼公演が1971年3月に開催され、多くの観客が詰め掛けましたが、もはや彼なしでの活動が困難であることが浮き彫りとなりました。

解散とその後

1972年、浪曼劇場は解散を迎えました。わずか3年弱の活動期間でしたが、その間に残した影響は大きく、メンバー各自がその後も別々に演劇界で活動を続けました。参加者の中には、三島由紀夫以外にも、松浦竹夫や堂本正樹、村松英子など、数多くの才能ある演出家や俳優が名を連ねていました。

このように、浪曼劇場は短い期間ながらも、日本の現代演劇の中で重要な役割を果たし、三島由紀夫の芸術的遺産を次世代に受け継ぐ存在となったのです。

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