和方医学

和方医学

和方医学（わほういがく）は、日本において独自に発展してきた医学のことを指します。これは、中国から伝来した漢方医学とは区別されます。また、皇国医方（こうこくいほう）とも呼ばれることがあります。

概要

和方医学の起源は、平安時代初期に遡ります。大同3年（808年）、中国医学の流入により危機に瀕していた日本固有の医方を保護するため、平城天皇の命を受けた安倍真直・出雲広貞らによって『大同類聚方』が編纂されました。この書物は、江戸時代には和方の聖典として尊重されましたが、現在では、当時存在したとされる同書は偽書であったことが明らかになっています。

江戸時代中期になると、国学の台頭とともに和方医学の重要性が唱えられるようになりました。実証的な蘭方医学（西洋医学）や理論的な中国医学といった外来の医学を批判し、古来から伝わる民間療法などを再評価することで、日本の風土に合った医学の探求が行われました。

黒川道祐は日本の医学史を研究し『本朝医考』を著しました。続いて森養竹（立之）が各地に残された医方を集めて『採用国伝方』を、三宅意安が『延寿和方彙函』を著しました。その他にも、古方派の漢方医である香川修徳や吉益東洞なども民間療法の研究を行いました。しかし、江戸時代後期になると、これらの漢方医の研究を批判し、独立した医学を確立しようとする動きが現れました。尊王論の高まりに支えられる形で、文化4年（1807年）に『神霊奇霊伝』を著した太田見竜、嘉永4年（1851年）に『医法正伝』を著した花野井有年が一家を立てて活躍しました。また、他の代表的な医師として、森川宗円・松川鶴麿・佐藤方定などがいます。

しかし、次第に尊王論に基づいた西洋医学・漢方医学排斥論に傾くようになり、実用性から遊離するようになりました。その結果、明治時代以降は西洋医学の隆盛の前に衰退していくことになりました。

和方医学は、日本の伝統的な医療を再評価し、日本の風土に合った医療を追求した医学として、その歴史的意義を認識することができます。

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