和泉市久保惣記念美術館

和泉市久保惣記念美術館：東洋古美術から西洋近代絵画まで網羅する、充実の市立美術館

概要

和泉市久保惣記念美術館は、大阪府和泉市に位置する市立美術館です。その歴史は、明治時代から続く泉州有数の綿織物企業「久保惣株式会社」の3代目社長、久保惣太郎氏(1926-1984)の篤い文化への貢献から始まります。

久保惣太郎氏は、長年にわたる収集で培った約500点におよぶ貴重な東洋古美術コレクション、そして美術館建設のための土地と建物（本館、茶室）、さらに多額の基金を和泉市に寄贈。その結果、1982年（昭和57年）、和泉市久保惣記念美術館が開館しました。

開館後も、久保惣家からの寄贈は続き、5代目である久保恒彦氏（3代目惣太郎氏の弟）による新館の寄贈（1997年）、久保惣記念文化財団を通じた音楽ホール、創作教室、市民ギャラリー、研究棟の寄贈（1999年、2006年）など、美術館の充実には目覚ましいものがあります。現在も久保恒彦氏が名誉館長を務めています。

充実したコレクション

美術館の所蔵品は、当初の久保惣コレクションを基盤として、その後も継続的に寄贈や購入によって充実を続けており、現在では国宝2件、重要文化財29件を含む約11000点に及ぶ膨大なコレクションを誇ります。

久保惣コレクションは、収集年代や経緯から第一次から第五次コレクションに分類され、仏画、絵巻、陶磁器など、数多くの名品が含まれています。その規模と質は日本でも有数の個人コレクションとして高く評価されています。

久保惣コレクション以外にも、館の事業や運営に賛同したコレクターからの寄贈品も多数収蔵されています。代表的なものとして、林宗毅氏（1923-2006）が収集した中国近代絵画「定静堂コレクション」（400点余り）、実業家・江川淑夫氏が収集した中国の帯鉤（たいこう）や青銅器（260点余り）などが挙げられます。

特に注目すべきは、約6000点に及ぶ浮世絵コレクションです。関西圏において浮世絵をこれほど大規模に公開する機関は少なく、展観においても高い人気を誇っています。

新館には、モネ、ルノワール、セザンヌ、ゴッホ、ピカソ、ロダンといった西洋近代絵画・彫刻や中国の工芸品なども展示され、東洋と西洋、そして古美術と近代美術を融合した多彩なコレクションを楽しむことができます。

主な収蔵品

美術館の収蔵品は多岐に渡り、国宝、重要文化財を始め、様々なジャンルの作品が所蔵されています。以下に、その一部をご紹介します。

国宝

青磁鳳凰耳花生　銘万声（南宋時代）
歌仙歌合

重要文化財

多数の日本絵画、中国絵画、彫刻、陶磁器、金工、書跡典籍、考古資料

その他の主な収蔵品

オーギュスト・ルノワール 「花飾りの女」
クロード・モネ 「睡蓮」
ジョルジュ・ルオー 「女ピエロ」
アメデオ・モディリアーニ 「イタリアの娘」
オーギュスト・ロダン 「考える人（縮小版）」
フィンセント・ファン・ゴッホ 「棒あるいは鋤を持ってかがむ男性」
藤田嗣治 「眠る猫（猫十態より）」
東洲斎写楽 「三世坂東彦三郎の鷺坂左門」

施設概要

美術館は本館、新館の他、和泉市久保惣市民ホール、市民ギャラリー、市民創作教室、日本庭園、ティールームなどを備えています。

所在地: 〒594-1156 大阪府和泉市内田町3-6-12
交通アクセス: 泉北高速鉄道線和泉中央駅、JR阪和線和泉府中駅、南海本線泉大津駅から南海バス利用。阪和自動車道岸和田和泉ICから約3分。駐車場完備（約100台、無料）。

参考文献

田中日佐夫 『美術品移動史 ─近代日本のコレクター達─』 日本経済新聞社、1981年11月
脇村春夫 「久保惣 ─久保美術館に至る久保家5代の経営者の足跡（1885～1997）─」
和泉市久保惣記念美術館編集・発行 『久保恒彦父子コレクション 浮世絵版画秀鑑』など

和泉市久保惣記念美術館は、質の高いコレクションと充実した施設で、多くの人々を魅了する、関西を代表する美術館の一つです。

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