唐鐸

唐鐸（とう たく）

唐鐸（1329年 - 1397年）は、元末から明初にかけて活躍した官僚・政治家です。字は振之といい、本貫は泗州虹県（現在の安徽省宿州市一帯）です。朱元璋が反乱を起こした当初から側近として仕え、その信任を得て重要な役割を担いました。

生涯

唐鐸は、朱元璋が挙兵したときからその側近として仕えました。朱元璋に従い、濠州の守備や江州の平定に参加し、その功績から西安県丞に任じられました。その後、南京に召還され中書省管勾となりました。

1368年（洪武元年）、湯和が延平を陥落させると、唐鐸は延平府知府に任じられました。彼は、新たに帰順した人々をなだめ集め、地域の安定に尽力しました。3年間延平に在任した後、南京に召還されて殿中侍御史となり、さらに紹興府知府として出向しました。

1373年（洪武6年）12月、南京に呼び戻され刑部尚書に任命されました。翌年には太常卿に転じますが、母親が亡くなったため辞職し喪に服しました。しかし、特別に俸給の半額が支給されるという異例の待遇を受けました。

1381年（洪武14年）11月、喪が明けると、兵部尚書として再び任官しました。

1382年（洪武15年）11月、唐鐸は諫議大夫となり、その後監察御史に左遷されました。彼は、有能な京官を地方の知事に登用し、才能ある人材を積極的に探し出すよう訴えました。また、経験豊富で人望の厚い人物を布政使や按察使に任用するよう進言し、洪武帝に受け入れられました。その後、唐鐸は右副都御史に抜擢されました。

1385年（洪武18年）10月、刑部尚書に再び任命され、1388年（洪武21年）6月には兵部尚書に転じました。1389年（洪武22年）4月に詹事院が設置されると、唐鐸は詹事を兼務しました。同年5月、辞職しました。

1393年（洪武26年）には、太子賓客として復帰し、太子少保に昇進しました。1395年（洪武28年）、龍州土官の趙宗寿が鄭国公常茂の死について虚偽の報告をしたことから、唐鐸は招諭のために派遣されました。唐鐸が現地に到着すると、常茂は病死であったことが判明し、趙宗寿も降伏しました。洪武帝は、龍州に派遣した軍を転用して、楊文に諸州の少数民族の反乱を鎮圧させ、唐鐸には軍事の参議を命じました。翌月には反乱は鎮圧され、唐鐸は現地の状況を観察し、奉議衛など各地に守禦千戸所を設置し、官軍を駐屯させるよう進言しました。彼の進言は全て聞き入れられました。

1397年（洪武30年）7月、唐鐸は南京で亡くなりました。享年は69歳でした。死後、太子太傅の位を追贈され、諡は敬安とされました。

人物・逸話

唐鐸は、その人柄の良さから洪武帝に重用されました。

ある時、洪武帝が側近と歴代王朝の興亡について議論した際、「朕の子孫を周の成王や康王のように、輔弼する臣下を周公旦や召公奭のようにして、王朝の命脈が長く続くことを天に祈るべきだろう」と述べました。これに対し、唐鐸は「大善至徳の人物を太子の教師とし、側近を選んで輔導させれば、宗廟と社稷は万年の福を享受できるでしょう」と進言しました。

また、洪武帝が「人には公私があり、そのため言葉には正邪がある。正しい言葉は諫言や忠告に、邪な言葉は誹謗や阿諛に用いられる」と述べた際には、「誹謗は忠言に近く、阿諛は愛に近しいものです。それらに惑わされなければ、人を中傷してへつらう人物は近づいてこないでしょう」と述べ、洪武帝を感心させました。

唐鐸は有徳の人であり、性格は慎重で、みだりに取ったり与えたりしなかったと伝えられています。

洪武帝は唐鐸について「唐鐸とは、友として君臣として今まで三十数年の付き合いになるが、人と付き合って顔色を変えることもなく、また人の悪口を言うこともない」と評しました。

また、洪武帝は「都御史の詹徽は剛毅果断で悪を憎み、彼の働きによって胥吏は不正を働くことができないが、彼に対する不満や誹謗が朝廷に満ちている。唐鐸は重厚で、臆病と言われるほど何も行動しない。人の心が古くならないとは、こういうことだろうか」と述べました。後に詹徽は罪に問われて処刑されましたが、唐鐸に対する洪武帝の信任は揺るがなかったとされています。

参考文献

* 『明史』巻138 列伝第26

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