唯物論研究会

唯物論研究会とは

唯物論研究会（ゆいぶつろんけんきゅうかい）は、1932年（昭和7年）10月23日に、戸坂潤、三枝博音、岡邦雄らによって創立された研究団体です。略称は『唯研』と呼ばれています。

設立の背景

1932年6月頃から、岡邦雄、三枝博音、戸坂潤を中心に、小倉金之助、永田広志、服部之総、本多謙三らが集まり、数回の会合を重ねました。同年9月25日には発起人会を開催し、長谷川如是閑を議長に迎え、規約草案の作成、機関誌発行の準備、会員の推薦、総会の準備、財政報告などが行われました。

規約第一条には、「現実的な諸課題から目をそらすことなく、自然科学、社会科学、哲学における唯物論を研究し、啓蒙に貢献する」という会の目的が掲げられました。幹事17名、発起人40名で発足しました。

当時、治安維持法による取り締まりが厳しかったため、マルクス主義者の団体という形態を避け、唯物論を広く研究する団体として設立されました。そのため、必ずしもマルクス主義の立場ではない科学者（寺田寅彦など）も参加していました。

活動内容

毎週土曜日の夜に研究会を開催し、機関誌『唯物論研究』を発行しました。研究会自体は政治的な意図や意義を持つものではないとされていましたが、1938年（昭和13年）1月8日、幹事会で集会活動の中止と機関誌の編集方針の変更が決定されました。同年2月12日には、自主的な解散へと追い込まれ、機関誌『唯物論研究』も廃刊となりました。

活動期間は短期間でしたが、『唯物論全書』の刊行など、当時の思想界だけでなく、戦後日本の唯物論研究に多大な影響を与えました。

機関誌『唯物論研究』

機関誌『唯物論研究』は、1932年11月の創刊号から1938年3月の第65号まで刊行されました。

研究会の思想的特徴は、戸坂潤の影響下にある客観主義的な思考と、明晰な思惟であると言われています。

解散後の活動

研究会解散後、運営に関わっていた会員の多くは「學藝發行所」を組織し、1938年（昭和13年）2月25日に準学問的な新雑誌の発刊を警視庁検閲課に届け出ました。

新月刊誌『學藝』は、唯物論研究会の後継誌として、号数も引き継ぎ、第66号（1938年4月）から第73号（1938年11月）まで刊行されました。

しかし、1938年（昭和13年）11月29日、警視庁検閲課は内務省の指令により、『學藝』を「安寧秩序を紊す恐れがある」として発売禁止処分とし、発行所と市内の書店から2470部を押収しました。同時に主要会員が検挙されたため、唯物論研究会からの活動は終了しました。『學藝』12月号（通算第74号）は発行直前に当局に押収され、そのまま廃刊となりました。

主なメンバー

戸坂潤
三枝博音
岡邦雄
小倉金之助
永田広志
服部之総
本多謙三
寺田寅彦

関連書籍

古在由重『戦時下の唯物論者たち』青木書店、1982年、ISBN 4-250-82051-3
『季刊・唯物論研究』編集部（編） 『証言・唯物論研究会事件と天皇制』新泉社、1989年

外部リンク

* 「唯物論研究会」の検索結果 - 国立国会図書館デジタルコレクション

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