四和音

四和音とは

音楽における「四和音」は、四つの異なる音高（ピッチクラス）を持つ楽音で構成される和音のことを指します。英語では「テトラッド（tetrad）」と呼ばれ、三和音にさらに一つの音を加えることで生まれる、より複雑で豊かな響きを持つ和音として広く用いられています。

構成と定義

四和音の定義には、厳密な意味合いとより広い意味合いがあります。

狭義の四和音：一般的に四和音として認識されるのは、ある音を根音（ルート）として、その上に長3度または短3度、完全5度、そして長6度または短7度、長7度といった特定の音程関係を持つ音が積み重ねられた和音です。これは、三和音（根音、3度、5度）にさらに一つの音（6度または7度）が追加された形と考えることができます。

広義の四和音：一方、より広い意味では、音程関係や積み重ね方に依らず、単に四つの異なる音高を持つ和音全般を四和音と呼ぶこともあります。しかし、音楽理論や実際の演奏において「四和音」という言葉が使われる場合、多くは前述の狭義の定義、特に三和音に7度を加えた「七の和音」や、6度を加えた「六の和音」などを指すことが一般的です。

主な種類

四和音には様々な種類が存在しますが、中でも特に重要で頻繁に用いられるものとして、七の和音と六の和音が挙げられます。

七の和音：三和音の上に根音から数えて7度の音程を持つ音が加えられたものです。長七和音、短七和音、属七和音、減七和音などがあり、それぞれが独特の響きと機能を持っています。特に属七和音は機能和声において解決を導く重要な役割を果たします。
六の和音：三和音の上に根音から数えて6度の音程を持つ音が加えられたものです。長六和音や短六和音などがあり、ジャズやポピュラー音楽で色彩感を加えるためによく使われます。
付加音を含む和音：狭義の四和音とは少し異なりますが、三和音に特定の音（例えば9度や11度、13度など）が付加された結果、結果的に四つの音高を持つ和音となる場合もあります。これらは「アド・コード」などと呼ばれることもあります。
四六の和音：これは多くの場合、三和音の第二転回形を指しますが、特定の文脈（例えばカデンツにおける主和音の四六など）では四つの音を持つ和音として扱われることもあります。

音楽における役割

四和音は、三和音に比べてより豊かで複雑な響きを持ち、楽曲に多様な色彩や感情表現をもたらします。また、特定の四和音（特に属七和音）は、次の和音への強い解決感を促し、音楽の進行において重要な推進力となります。

ジャズやポピュラー音楽では、四和音はコード進行の基本単位として広く利用されており、さらにテンションノート（9th, 11th, 13thなど）を加えて、五和音以上の複雑なコードを形成する土台ともなります。クラシック音楽においても、七の和音は古典派以降、楽曲の構成や表現において不可欠な要素となっています。

他の和音との関係

音楽理論では、音の数に基づいて和音を分類することがあります。無音、単音、二和音、三和音、四和音、五和音、六和音、七和音、八和音、九和音、十和音、十一和音、十二和音といった分類の中で、四和音は三和音と五和音の間に位置づけられます。三和音を発展させた形として捉えられ、さらに多くの音を持つ和音へと繋がる重要な段階と言えます。

結論

四和音は、四つの音が織りなす独特の響きと機能によって、音楽表現の幅を大きく広げる重要な要素です。様々な種類があり、それぞれが楽曲に異なるニュアンスを与えます。三和音から発展した形として、またより複雑な和音への基礎として、音楽理論と実践の両面で不可欠な存在と言えるでしょう。

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