四手角

四手角：角行の精密配置が特徴の戦法

四手角は、将棋の居飛車戦法において、角交換をせずに自陣の角行を4手かけて特定の地点に配置する戦法です。先手であれば2六、後手であれば8四に角を配置することが多く、矢倉、雁木、さらには対振り飛車にも見られる戦法です。

矢倉における四手角

矢倉囲いでは、玉を安全な位置(▲8八)に移動させるために角行の配置が重要になります。四手角は、▲7九に引いた角を、▲4六角、▲3七角、▲2六角といった手順で4手かけて2六に移動させることからその名が付きました。これは、玉の移動経路を確保し、同時に攻めの準備を整えるための戦術的配置です。

3手角というバリエーションも存在します。これは▲7七角から▲5九角、▲2六角と3手で移動させる手順で、四手角よりも速やかに角を活性化させることを目指します。四手角と3手角は、矢倉の組み方や展開によって使い分けられてきました。

かつては相矢倉、特に総矢倉において頻繁に用いられた戦法でしたが、現代将棋では銀矢倉と共に衰退しました。特に、▲3七銀戦法に対する後手番で用いられることが多かったようです。

四手角が用いられる矢倉の陣形は、主に総矢倉と呼ばれる形でしたが、稀に他の陣形も見られました。例えば、▲3五歩△同歩▲同角の後に▲2六角と進めることで、3手角と同様の攻撃陣を構築する狙いがありました。これは、3六銀、3七桂と駒を配置し、攻撃の基点とする戦略です。

現代将棋では、矢倉3七銀戦法や森下システムなど、より積極的な攻めを重視する戦法が主流となったため、四手角のような守備的な陣形は次第に姿を消していきました。現代将棋では、攻めに厚みを持たせたり、自陣に好形を作って相手の攻めを待ち受けるよりも、積極的に攻める戦法が好まれる傾向にあるため、四手角は衰退の一途を辿ったのです。

四手角を用いた攻撃例としては、持ち駒に歩がある場合、▲4五歩と突くことで相手を崩すことができます。後手が△7二飛と応じた場合、▲2四歩△同歩▲2五歩と継ぎ歩で攻勢を強めます。△同歩ならば▲同桂と桂馬を突き出して攻め込み、△2四銀と受けた場合は▲4四歩とさらに攻めを継続することが可能です。また、4二に角がある場合は、▲4五歩△同歩▲同桂△4四銀とすると、機を見て▲4四角△同金▲5三銀と攻める狙いが生まれます。

対振り飛車における四手角

対振り飛車、特に四間飛車に対しては、左美濃に囲い、角行を右に展開して2六に配置する戦法があります。この場合、相手が△4四銀と銀を配置してきたならば▲2六角と構え、△5四歩▲3七桂△5五歩▲5二飛と進行することも考えられます。しかし、5六に角があるため、必ずしも2六に配置する必要はなく、一旦3七に角を配置し、状況に応じて▲5五歩と突くなど柔軟に対応することが可能です。△同角ならば▲2四歩、△同銀ならば▲2四歩△同歩▲5五角△同角▲2四飛と攻めを継続することができるでしょう。

このように、四手角は局面に応じて柔軟な対応が求められる戦法であり、現代将棋では主流ではありませんが、将棋の歴史において重要な役割を果たした戦法の一つと言えるでしょう。

参考文献：『阿久津主税の中盤感覚をみがこう』156ページ ISBN 978-4140161876

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