四本商人

四本商人：近江商人のルーツ、湖東の地から鈴鹿を越えて

四本商人とは、室町時代から戦国時代にかけて、近江国湖東（現在の滋賀県東部）を中心に活躍した商人集団です。彼らは近江商人のルーツの一つとして知られています。蒲生郡得珍保の野々川商人（保内商人）や、神崎郡小幡荘の小幡商人など、以下の4つの地域の商人が連合して活動していました。

野々川（現在の東近江市今堀町など）：保内商人、野々郷商人とも呼ばれる
石塔（現在の東近江市石塔町）
小幡（現在の東近江市五個荘小幡町）
沓懸（現在の愛知郡愛荘町沓掛）

比叡山の庇護と「山越衆」としての活動

四本商人は、比叡山延暦寺の保護を受けていました。彼らは八風街道や千種街道を経て桑名に至り、北伊勢や濃尾の商人たちと通商を行いました。鈴鹿山脈を越える広範な商圏を持っていたことから、「山越衆（やまごえしゅう）」とも呼ばれていました。

室町時代には、山越えの際に数百人規模の商団を編成し、傭兵による警備を必要とするほどでした。これは当時の流通がいかに大規模であったかを物語っています。

鈴鹿山脈を越える交易路

近江から伊勢国の桑名へ向かう際、鈴鹿山脈を越えるにはいくつかの主要な峠がありました。北から順に、鞍掛峠、治田峠、石榑峠、八風峠、根ノ平峠、安楽峠などが挙げられます。

特に利用されたのは、現在の東近江市甲津畑町から根ノ平峠を越えて三重県菰野町千種に至る千種街道（千種越え）と、永源寺町杠葉尾から八風峠を越えて菰野町田光に至る八風街道（八風越え）でした。

「八風越え」は、近江の八日市・近江八幡と桑名を結ぶ重要な通商路でしたが、近江蒲生郡得珍保内の今堀・蛇溝・中野・今在家などの諸郷の商人が、商業を独占していました。永禄2・3年（1559年・1560年）の「保内商人申状案」によると、保内商人が八風・千種越えで、千種氏から両峠の流通独占権を認められ、その見返りとして役銭を支払っていた記録があります。

保内商人は桑名で東海地方の産物（主に麻の苧・紙・木綿・土の物・塩・油草・若布・鳥類・海苔類・荒布・魚類・伊勢布など）を仕入れ近江や京都で販売しました。また近江からは、京都や周辺で生産された物資の他、木地師の盆、椀、曲物、木炭、麻などの山のものが桑名へ運ばれ伊勢湾を経て尾張以東の東海道諸国へ送られて販売されました。

五箇商人との関係

同じく湖東に拠点を持ち、若狭方面との通商を担った五箇商人とは対抗関係にありました。ただし、小幡商人は四本商人・五箇商人の双方と関係を有していました。

主な商品

四本商人が扱った主な商品は以下の通りです。

カラムシ（苧麻）：上布の原料
紙
塩
海藻類

まとめ

四本商人は、近江商人の源流として、室町・戦国時代の経済活動において重要な役割を果たしました。彼らの活躍は、近江商人の進取の気性と広範な交易ネットワークの基礎を築いたと言えるでしょう。

参考資料

『国史大辞典』（吉川弘文館）
『日本史大事典』（平凡社、1994年）
『日本歴史大事典』（小学館、2000年）
高柳光寿、竹内理三「角川日本史辞書」、角川書店、1979年10月。
川中清司『近江商人の道（2）会報2008年5月号』（レポート）2008年5月。

関連項目

延暦寺
近江商人

外部リンク

近江商人とは - 東近江市近江商人博物館

もう一度検索