石榑峠

石榑峠（いしぐれとうげ）

石榑峠は、鈴鹿山脈を東西に横断する、三重県いなべ市と滋賀県東近江市との境に位置する峠です。国道421号が通っており、標高は690mです。

概要

かつての石榑峠は、約2kmにわたる狭隘な区間と急勾配が続く難所でした。道幅が狭く、2t以上の車両は通行止め、車幅2mを超える車両も通行できませんでした。冬期は閉鎖されることもあり、交通のネックとなっていました。しかし、2011年に石榑峠道路が開通したことで、状況は一変しました。

石榑峠は鈴鹿山脈の主稜線上に位置し、北側の竜ヶ岳から南側の釈迦ヶ岳へと続く登山道が鞍部を通っています。峠の近くにはかつてNTTの無線中継所がありましたが、現在は撤去されています。

歴史

江勢道路建設と国道昇格

1934年頃から、八風街道を国道に昇格させる動きが活発化しました。戦前の国道昇格は実現しませんでしたが、1939年の実地調査で、八風峠よりも石榑峠に道路を開設する方が望ましいという見解が示されました。第二次世界大戦後、三重県と滋賀県を結ぶ「江勢道路」の整備が本格的に進められました。

1951年には滋賀県議会で改修工事事業が採択され、三重県側では既に工事が開始されていました。1962年には滋賀県が策定した林道計画が国の採択を受け、大規模林道として開設されることになりました。滋賀県側の建設工事は1964年に開始され、1970年7月に完成しました。この林道は杠葉尾から八風谷を経て石榑峠に向かうもので、総延長6908m、幅員4m、工費は2億6千万円でした。滋賀県側では竣工直後は林野庁の所轄でしたが、1975年に永源寺町道、同年12月には滋賀県道になりました。1976年2月には、三重県・滋賀県の関係自治体によって国道昇格期成同盟会が結成され、1982年4月に国道421号に昇格しました。

石榑峠道路の建設

従来の石榑峠は、鈴鹿山脈を横断する県境付近の急峻な地形のため、道路状況は決して良好とは言えませんでした。そこで、国道421号石榑峠道路の建設が1997年12月に決定され、2003年に事業化、2006年5月27日に着工しました。2009年1月30日にはトンネルの貫通式が行われ、2011年3月26日に供用が開始されました。

石榑峠道路の開通により、所要時間が約30分短縮され、冬期閉鎖や重量車規制が解消されました。旧道はトンネル完成前の2008年9月2日の豪雨により崩落し、長期通行止めとなりました。トンネル開通後に市道に移管され修復されましたが、一部区間は既に廃道となっています。

石榑峠道路の概要

延長：4.5km（うちトンネルは4157m）
道路構造令：第3種第3級
設計速度：50km/h

未成線の名古屋急行電鉄

石榑峠には、かつて名古屋急行電鉄がトンネルを建設する計画がありました。また、新幹線の前身である弾丸列車も石榑峠を通る予定でしたが、最終的には米原を経由するルートが採用されました。

脚注

座標は国土地理院地図閲覧サービスによる。

参考文献

永源寺町史編さん委員会『永源寺町史　通史編』東近江市、2006年11月30日。

関連項目

日本の峠一覧
国道421号
酷道

外部リンク

地図閲覧サービス（石榑峠） - 国土地理院
国道421号石榑峠（いしぐれとうげ）道路 - 国土交通省 近畿地方整備局 滋賀国道事務所
国道421号石榑峠道路における環境影響調査について (PDF)
石榑峠道路が整備されます (PDF)

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