国体の本義

『国体の本義』とは

『国体の本義』は、1937年に日本の文部省によって発行された、国家の本質に関する教科書です。この書籍は、国体明徴運動の一環として作成され、天皇に関する異義や国体についての基本的な考え方が示されています。

編纂の経緯

この書の編纂は、当時議論されていた天皇機関説問題に対する反発から始まりました。1933年には「日本精神の聖書的な教典となる国民読本の編纂が求められている」との決議があり、それを受けて1935年に文部省が予算を要求しました。編纂に関する人選は、文部省の思想局長や教育官が行い、多くの著名な学者が委員として参加しました。彼らの中心的な役割を果たしたのは久松潜一と弟子の志田延義でした。

この書は30万部が配布され、1943年には市販版が190万部に達しました。1937年の帝国議会では、その内容が法治主義とは異なることが議論され、多くの閣僚はその時点でまだ内容を把握していなかったと言われています。しかし、日中戦争の影響を受け、次第にこの書は聖典と化していきました。

内容

この教科書は「大日本帝国は万世一系の天皇の神勅に従って統治される」という国体の定義を掲げ、共産主義や無政府主義を否定しています。また、民主主義や自由主義も国体に合わないものとして扱われ、これらのむなしさは個人主義の行き詰まりから生じたとしています。

特に「万世一系の天皇」については、天皇の存在とその役割が非常に強調され、国民に向けた大きなメッセージとなっています。国民はこの教科書を通して、日本独自の国の成り立ちや精神を理解し、国体の重要性を認識したとされています。また、書籍は『国体の本義解説叢書』などの多くの解説書が続くなど、国体に関する研究や教育に広く利用されています。

書誌情報と関連文献

『国体の本義』についての追加情報は、文部省が発行した関連資料に含まれています。例えば、解説書や普及資料が続けて発行され、国体に関するさまざまな視点が提起されています。著名な学者による論考も数多く存在し、戦後もその重要性は色あせることなく、多くの研究が行われ続けています。

結論

『国体の本義』は、日本の国体を理解するための重要な文献として位置付けられており、戦前の思想や教育に重大な影響を与えました。天皇制や国体の考え方が形成されていた時代背景を考慮することで、この書が持つ意義をより深く理解することができます。

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