国儲

国儲（こくちょ）についての詳細

国儲とは、古代日本の律令制における重要な官物の一つであり、当初は「公用稲」として知られていました。この仕組みは、特定の公的な業務に従事する人々のために設けられたものであり、さまざまな用途に充てられる財源として機能しました。

概要と歴史的背景

「国儲」という名称は、かつて「国内儲物」や「国儲物」と表記されていたものが省略された形で生まれました。国儲の主な用途は、朝集使の食料や、各地域から都へ派遣される臨時使者、さらには貢物を運ぶ人々のための経費とされていました。これらの資金は、臨時的な活動を支えるために必要不可欠なものでした。

神亀元年（724年）の3月、この制度の一環として公用稲が正式に設定されました。当時、国家の重要な収入源であった正税の一部（具体的には大国4万束、上国3万束、中国2万束、下国1万束）を基にして、公用稲が設けられ、そこから得られる利益を利用して、さまざまな経費にあてることが目的でした。その後、天平6年（724年）になると、官稲の整理が行われ、正税に集約される中で、国儲もこれに併せて新たな形で運用されるようになりました。

国儲の変遷

国儲に関する記録は、正倉院文書に残された正税帳に見ることができます。また、天平17年（745年）に公廨稲が設置された後は、正税から国儲を分け出すことが停止されることとなります。この時期においては、国儲の定義や運用方法に関して諸説が存在しています。しかし、天平宝字元年（757年）の公廨稲の配分についての定めにおいては、国儲が官物の一部として挙げられていることから、その存在が改めて確認されています。

国儲はその後、公廨稲の利息から資金を派生させる形で運用されることが一般化しました。具体的には、延暦22年（803年）には、公廨稲全体の1割（例えば大国1.2万束など）を国儲のための定額として設定し、その資金を利用する仕組みが整えられました。この時には、神亀元年の事例が参照され、公用稲の再評価がなされると共に、朝集使以外の四度使の食料も国儲から支給されることが決まります。

特異な事例：島儲

国儲とは別の類似制度として、対馬国では神護景雲元年（767年）に右大臣吉備真備が提案した「島儲」があります。この仕組みは国儲に準じて運用されており、いわば地域ごとの特例として存在していました。

律令制の衰退と国儲の変化

その後、律令制の衰退が進むにつれて、国儲の安定的な確保が困難となりました。この時期には公廨稲における国儲の割合を増やす試みもありましたが、10世紀になると正税も公廨稲制度もほぼ崩壊し、国家の経済基盤の変化が見られるようになります。国儲制度もほとんど形骸化し、その存在意義が薄れていくこととなります。

結論

国儲は日本国内の歴史の中で官物として重要な役割を果たしていましたが、時代の移り変わりと共にその運用方法や意味合いが大きく変わっていったことが分かります。この制度の変遷を通じて、古代日本における経済制度の一端を知ることができ、国家とそれに関わる人々の関係を考察する上で貴重な研究対象となります。

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