国司親相

国司親相：幕末長州藩を揺るがせた志士の生涯

国司親相（くにし ちかすけ）は、激動の幕末期を駆け抜けた長州藩の志士です。諱は親相ですが、信濃（しなの）の名でも広く知られています。若くして非凡な才能を示し、藩政の中枢で活躍する一方、尊王攘夷運動の中心に身を投じ、数々の重要な出来事に関わりました。その波乱に満ちた生涯と、責任感の強さ、そして潔い最期について、詳細に見ていきましょう。

生い立ちと頭角

天保13年（1842年）、寄組藩士の高洲元忠の次男として生まれた親相。幼少期は丑之介、徳蔵、熊之助といった様々な名前で呼ばれていました。6歳の頃には、5600石を領する寄組藩士、国司迪徳の養嗣子となり、弘化4年（1847年）には家督を継いで大組頭となりました。恵まれた家柄に加え、幼い頃から持ち合わせた聡明さにより、着実に頭角を現していきます。文久3年（1863年）には、長井雅楽の切腹検視役正使を務めるなど、藩政における重要な役割を担うようになりました。

下関海峡の砲撃と禁門の変

ペリー来航以降、日本国内では尊王攘夷の機運が高まりました。文久3年（1863年）5月10日、親相は久坂玄瑞らと共にアメリカ船ペンブローク号を砲撃し、下関海峡を封鎖しました。この大胆な行動は朝廷から褒賞を受けるほどの功績となり、親相は下関防備総奉行に任じられます。しかし、八月十八日の政変で長州藩が京都から追放されると、親相は家老に昇格。益田親施、福原元僴、久坂玄瑞、来島又兵衛、真木保臣らと共に、長州藩の京都における影響力回復を目指し、元治元年（1864年）7月19日に禁門の変を起こします。

薩摩藩・会津藩連合軍との激戦は、長州藩の敗北に終わりました。来島、久坂、真木らは自刃し、親相は戦乱の責任を深く痛感します。「はかなくも風の前の燈火の、消えゆることのみ待つ我が身かな」という歌にも、その心情が表れています。責任を負い、自害も覚悟した親相でしたが、藩主の命により、玉砕を避け帰藩することになります。

最期の決断

その後、第一次長州征伐が始まり、徳川慶勝を総督、西郷隆盛を参謀とする幕府軍が長州に攻め寄せます。西郷は長州藩に対し、責任を取る形で親相を含む三家老の切腹を要求しました。元治元年（1864年）11月12日、親相は徳山澄泉寺にて自刃。享年23歳でした。親相の家老職は、益田や福原のような永代家老ではなく、実力によって昇進した地位であった点が注目されます。

死後と評価

親相の辞世の句には、「よしやよし　世を去るとても　我が心　御国のために　なほ尽さばや」「君がため　つくせやつくせ　おのがこの　命一つを　なきものにして」とあります。これらの句は、国への忠誠心と、自らの命を惜しまない決意を示しています。墓所は宇部市奥万倉の天龍寺です。死後、明治21年（1888年）には靖国神社に合祀され、明治24年（1891年）には贈正四位に叙せられました。

国司親相は、短い生涯の中で、幾多の激動を経験し、幕末の長州藩を代表する重要な人物として歴史に名を残しました。彼の勇猛果敢な行動と、強い責任感、そして潔い最期は、今も人々の記憶に刻まれています。

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