来島又兵衛

来島又兵衛（きじま またべえ）

来島又兵衛は、幕末の長州藩に生きた武士であり、尊皇攘夷運動の中心人物の一人です。遊撃隊を組織し、総督として活躍しました。彼の生涯は、激動の時代を象徴する物語として、後世に語り継がれています。

生い立ちと武芸の鍛錬

文化14年（1817年）1月8日、来島又兵衛は長門国厚狭郡西高泊村で、下級武士の次男として生まれました。幼名は喜多村又兵衛。後に、大組士である来島政常の婿養子となり、来島家を継ぎます。剣術に秀でており、柳川藩の大石神影流の創始者である大石進に師事し、その腕を磨きました。弘化3年（1846年）には江戸に出て、さらに武芸の鍛錬に励み、その名を轟かせました。嘉永元年（1848年）に帰国し、家督を継いだ後、藩の要職を歴任しました。嘉永2年（1851年）には、養父の死により、来島又兵衛政久と改名しています。

尊皇攘夷運動と遊撃隊の結成

文久3年（1863年）、尊皇攘夷の気運が高まる中、又兵衛は藩命により狙撃隊を率いて上洛します。しかし、八月十八日の政変で尊王攘夷派が失脚すると、長州藩に帰国。高杉晋作が奇兵隊を創設したことに触発され、又兵衛も遊撃隊を組織し、総督として国事に奔走しました。この遊撃隊は、長州藩の重要な戦力として、後の戦いにおいて大きな役割を果たします。

禁門の変での壮絶な最期

元治元年（1864年）、長州藩は前回の政変で失った地位を回復するため、再び兵を挙げます。又兵衛は、家老の福原元僴らと共に上洛し、薩摩藩の島津久光暗殺を企てますが、失敗に終わります。その後、藩主毛利敬親に出兵を促し、再び上洛。7月19日、禁門の変が勃発すると、又兵衛は先祖伝来の甲冑を身に着け、自ら遊撃隊を率いて戦いに挑みます。蛤御門での激戦中、薩摩藩兵の狙撃により胸を撃ち抜かれ、致命傷を負いました。自らの死を悟った又兵衛は、甥の喜多村武七に介錯を命じ、自ら槍で喉を突いた後、首を刎ねて果てました。享年48歳。

死後の影響

来島又兵衛の死後、長男の亀之助は藩主の命により森清蔵と改名し、井上馨の妹である厚子と結婚しました。また、厚子の甥を養子に迎え、その子孫は三井財閥で活躍しました。又兵衛の娘は美和家に嫁ぎ、その子孫にはピアニストや俳人、政治家などがいます。山口県美祢市にある美祢市立厚保小学校には、彼の銅像が建てられており、地元の歴史を語り継いでいます。又兵衛は、靖国神社や護国神社に祀られ、現在でも多くの人々に敬意を表されています。

関連作品

来島又兵衛の生涯は、多くのテレビドラマで描かれています。

『竜馬がゆく』（1968年、NHK大河ドラマ、演：安部徹）
『花神』（1977年、NHK大河ドラマ、演：石橋雅史）
『奇兵隊』（1989年、NTV年末時代劇スペシャル、演：竜雷太）
『竜馬がゆく』 (2004年、テレビ東京 新春ワイド時代劇、 演 : 石橋蓮司)
『龍馬伝』（2010年、NHK大河ドラマ、演：角田信朗）
『八重の桜』（2013年、NHK大河ドラマ、演：関戸将志）
『花燃ゆ』（2015年、NHK大河ドラマ、演：山下真司）
『西郷どん』（2018年、NHK大河ドラマ、演：長州力）
『青天を衝け』（2021年、NHK大河ドラマ、演：笠原竜司）

脚注

参考文献

三原清尭『来嶋又兵衛傳（再版）』小野田市歴史民俗資料館、1992年。

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