国対政治

国対政治

国対政治とは、日本の国会において、与党と野党の国会対策委員長同士が、本来議論を行うべき本会議や委員会を差し置いて、裏で話し合いを行い、国会運営の実権を握ることを指す言葉です。

概説

国対政治は、1960年の60年安保や1965年の日韓基本条約での強行採決後、1968年に田中角栄自民党幹事長が「話し合い」「根回し」と称して野党を懐柔したことから本格化しました。

55年体制下では、与党である自由民主党が、日本社会党、公明党、民社党の国対幹部と頻繁に連絡を取り合い、機密費を原資とした料亭での接待や金品の授受などの裏取引を行っていました。これにより、強行採決や乱闘などを事前に計画通りに行い、与野党双方の支持団体に「面目が立つ」ように国会を運営していました。しかし、日本共産党は裏取引の内容を中央機関紙『赤旗』に暴露したため、1970年代中頃以降は排除されるようになりました。

1980年代には、社共共闘の解消と社公民路線に伴い、議案採決や日程について、社会党も加えた共産党を除く全ての政党の間で調整が行われるようになりました。これは「オール与党」とも呼ばれ、「表で対立、裏では協調」という関係が進みました。金丸信・田邊誠、渡部恒三・大出俊、梶山静六・村山富市、小里貞利・野坂浩賢などの例が有名です。

1993年8月6日に成立した細川内閣のもとでは、「密室」「談合」などの批判を受け、政党によっては党組織の名称から「国会対策」を取り除く動きもあり、国対政治の機能は一時的に影を潜めました。しかし、1994年の自社さ連立政権による村山内閣成立では、国対政治で築かれた自民・社会両党のパイプが大きく影響したと言われています。なお、55年体制崩壊後においては、金品のやり取りはなくなったとされています。

1996年の橋本内閣下での住専国会では、自民党と新進党がピケ戦術と審議拒否を応酬したことで、国対政治の重要性が再認識され、小渕内閣下で復活しました。旧民社党が推し進めた日本共産党排除も解消され、与野党や野党連合の幹事長会談には、共産党の書記局長が他党の幹事長と同列に参加するようになりました。こうして、与野党間の国対政治は、共産党を含む主要全会派を巻き込んで続くことになりました。その後登場した日本維新の会などの新党も排除されず、国対政治に取り込まれています。

評価

小沢一郎は、55年体制を「自民党と社会党は地下茎でつながっていて、国会が止まったりするのは芝居。すべて実質的に全会一致だった」と批判し、保守二大政党制導入による国対政治からの脱却を主張しています。

参考文献

橋本五郎・加藤秀治郎・飯田政之 『図解・日本政治の小百科』 一藝社 2002年4月 ISBN 4901253255

関連項目

国会 (日本)
議院運営委員会
国会対策委員会
自由民主党国会対策委員会
日本共産党中央委員会書記局長
連立政権
非自民・非共産連立政権
自社さ連立政権
自公連立政権

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