国民の党

韓国の保守政党「国民の党」(1963年)：軍事クーデター後の政治と挫折

1963年、韓国で結成された「国民の党」は、5・16軍事クーデター後の政治状況下において重要な役割を果たした保守系野党です。本稿では、その成立から消滅までの経緯、党内抗争、選挙活動などについて詳細に解説します。ただし、安哲秀氏によって結成された、2016年と2020年の国民の党とは全くの別組織であることに留意が必要です。

誕生の背景：クーデター後の政治的混沌

5・16軍事クーデター後、韓国の政治は大きな転換期を迎えていました。軍事政権下で政治活動が解禁されると、様々な勢力が台頭し、保守派の間でも新たな政治勢力形成の動きが活発化しました。国民の党は、軍事クーデターを主導した勢力が民政移管後も実質的な支配力を維持することを阻止しようとする動きの中で誕生しました。

創党と党内抗争：統一への道のりは険しく

1963年1月、創党準備委員会が発足。金炳魯、許政、李範奭といった保守派の有力政治家が中心となり、複数の政党が合同して国民の党を結成しました。しかし、発足当初から党内は一枚岩ではありませんでした。大統領候補の選出を巡り、尹潽善と許政の間で激しい対立が起こり、尹潽善派が離党する事態に発展しました。結局、金炳魯、李範奭、許政の3派による再結成を経て、国民の党は正式に発足しました。

大統領選挙と総選挙：挫折と統合

1963年10月に行われた第5代大統領選挙では、許政を大統領候補として擁立しました。しかし、選挙直前に許政が立候補を辞退し、民政党の尹潽善を支持するという衝撃的な展開が起きました。この決定が国民の党の選挙戦略に与えた打撃は大きく、結果は惨敗でした。

続く11月に行われた第6代総選挙でも、国民の党はわずか2議席しか獲得できませんでした。この結果を受け、党の求心力は急速に低下し、1964年9月、国民の党は民主党に統合され、歴史の舞台から姿を消しました。

結論：短命に終わった保守野党

国民の党は、軍事クーデター後の韓国政治において、保守勢力の再編を図る重要な試みでしたが、党内抗争や選挙での敗北など様々な困難に直面し、わずか1年余りの寿命で幕を閉じました。この政党の失敗は、韓国保守派の分裂と政権奪取への困難さを象徴的に示す出来事と言えるでしょう。その歴史は、韓国民主主義の発展過程における複雑な政治状況を理解する上で重要な視点を提供してくれるでしょう。現代の国民の党との混同を避けるため、常に1963年結成の国民の党であることを明記する必要があります。

参考文献

韓国史事典編纂委員会　金容権編著『朝鮮韓国近現代史事典』日本評論社 第4章「軍事独裁と民主化運動」
尹景徹『分断後の韓国政治 : 一九四五〜一九八六年』木鐸社、1986年11月30日。NDLJP:12173192。

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