許政

許政：韓国近代史を彩った独立運動家と政治家

許政（ホ・ジョン、1896年-1988年）は、韓国の近代史において重要な役割を果たした独立運動家にして政治家です。朝鮮時代の終わりから、大韓民国の建国、そして朴正熙政権下まで、激動の時代を生き抜き、その生涯は韓国の歩みそのものを映し出すかのようです。

揺るぎない独立への志：初期の活動

釜山で貿易商の家に生まれた許政は、中央学校、普成専門学校法学科を卒業しました。学生時代には李東輝の講演に感銘を受け、3・1独立運動に参加。その後、中国に亡命し、大韓民国臨時政府に参加するなど、早くから独立運動に身を投じました。

その後、フランス、アメリカへと渡り、亡命生活の中で精力的に活動しました。フランスでは在仏韓人居留民団会長、アメリカではニューヨーク韓人留学生会長、北米韓人僑民総団長を務め、さらに『三一新報』という朝鮮語新聞の社長に就任し、海外で韓国の独立を訴え続けました。この頃、彼は「許政」という名前を使い始めました。

帰国後も、音楽教師や起業家として活動するも、事業はうまくいかず、鉱山経営に携わるようになりました。しかし、興業倶楽部事件や朝鮮語学会事件に巻き込まれ、逮捕・投獄される経験もしました。こうした困難を経験しながらも、李承晩の側近として監視下に置かれるほど、その存在感は大きかったのです。

李承晩政権と政治の中枢：華々しい活躍

太平洋戦争の終結後、許政はすぐに政治活動を再開しました。韓国民主党に参加し、国会議員に当選。李承晩政権下では、交通部長官、社会部長官、無任所長官などを歴任しました。1951年には、国連総会に出席した張勉国務総理の臨時代理を務めるなど、政府の中枢で活躍しました。また、釜山政治波動に関わるなど、激しい政治闘争の渦中にいました。

1957年から1959年まではソウル特別市長を務め、日韓会談の韓国側代表にも参加。1960年には外務部長官に就任しましたが、その年の大統領選挙での不正をきっかけに四月革命が勃発します。

この時、許政は李承晩に対し早期退陣を強く促し、李承晩が大統領を辞任すると、首席国務長官（内閣首班）兼外交部長官に就任。その後、憲法改正によって復活した国務総理に就任し、李承晩亡命から新政府発足までの過渡政府の大統領権限代行を務めました。この間、実質的に韓国の最高権力者として、混乱期の国政を掌握したのです。

政界引退とその後：影の指導者

第二共和国成立後は政界から引退し、李承晩の復権に尽力しましたが、5・16軍事クーデターによって朴正熙政権が成立すると、軍部からの誘いを断りました。その後も、国民の党を結成し大統領選への出馬を表明するなど、政治活動を続けますが、後に尹潽善を支持し、出馬を断念しました。

その後も野党で活動し続けましたが、1967年に再び政界を引退。しかし、朴正熙政権からは国土統一院顧問に指名され、崔圭夏、全斗煥政権下では国政諮問会議議員を務めるなど、政界引退後も、韓国政治に大きな影響を与え続けました。

結論：韓国近代史の証人

独立運動家として、政治家として、そして指導者として、許政は常に韓国の未来を憂い、行動を続けた人物です。彼の生涯は、韓国の近代史を理解する上で欠かせない重要な一部であり、その波乱に満ちた人生は、多くの示唆を与えてくれます。彼の著書『明日のための証言』は、その生涯を理解する上で貴重な資料となっています。

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