李範奭

李範奭（イ・ボムソク）の生涯

李範奭（イ・ボムソク、1900年10月20日 - 1972年5月11日）は、激動の時代を生きた大韓民国の政治家、そして独立運動家です。本貫は全州李氏であり、広平大君の17世孫にあたります。号は鉄騏（チョルギ）。別名として王雲山、李国根の名も持っています。李承晩政権下では、初代国務総理、初代国防部長官という要職を歴任しました。

生い立ちと独立運動への目覚め

1900年、李範奭はソウルの龍洞（現在の明洞）または忠清南道天安で誕生しました。父は李文夏で、大韓帝国の官僚であり、日本統治時代初期には伊川郡守を務めました。1925年には高麗人の独立運動家である金瑪利亜と結婚しています。また、大韓民国臨時政府の要人で、後に朝鮮日報社長を務めた申錫雨は姉の夫です。

京城高等普通学校を卒業後、呂運亨の助けを得て中国へ亡命。雲南講武堂騎兵科第12期生として学びました。三・一独立運動の熱気に触発され、抗日独立運動に身を投じることを決意。南満州にあった私塾・新興武官学校で教官を務めました。その後、徐一・金佐鎮の北路軍政署に所属し、青山里戦闘では金佐鎮率いる韓国独立軍の一隊として活躍したとされています。1922年から1925年までソビエト連邦の沿海州で高麗革命軍合同民族連隊の指揮官となりましたが、自由市惨変、日ソ基本条約、そしてロシア人妻の自殺といった出来事に幻滅し、1926年にソ連を脱出して満州で中国軍に身を投じました。

中国での軍歴と光復軍での活動

満州事変後、東北抗日義勇軍に加わり、蘇炳文軍の秘書兼高級参謀、馬占山軍の作戦科長を歴任しました。1934年には部隊が壊滅したため、再びソ連へ逃亡。その後、中国軍事考察団の一員としてヨーロッパ各国を視察した後、中国に帰還しました。1934年には、中央陸軍軍官学校洛陽分校特別班学生隊長に就任。

日中戦争では、国民革命軍に参加し、第3路軍高級参謀（少将）、第3集団軍第55軍参謀処長、中央訓練団中隊長を歴任。1940年には韓国光復軍参謀長に就任し、1942年からは韓国光復軍第2支隊長も兼務しました。1945年2月以降は、米軍の戦略情報局（OSS）が朝鮮人隊員に情報・通信訓練を実施するイーグル・プロジェクトを統率しました。終戦直前の1945年8月10日には、出撃を待機させていましたが、日本のポツダム宣言受諾により作戦は中止。8月18日、韓国光復軍挺進軍総司令として米軍輸送機で西安飛行場を離陸し、汝矣島滑走路に着陸。降伏した日本軍に一定の指示を与えた後、8月20日に帰還しました。

大韓民国での政治活動

解放後、李範奭は帰国し、自身の勢力基盤となる朝鮮民族青年団を創設。1948年7月31日には初代国務総理に任命されました。当初、李承晩は李允栄を国務総理に指名する予定でしたが、国会の承認を得られなかったため、李範奭が指名され、承認されました。8月15日には国防部長官を兼任し、軍の強化を推進しました。米軍事顧問団の反対を押し切り、政訓局を新設し、政訓将校を育成して将兵の精神武装を図りました。また、第4局（特殊工作局）を設け、対遊撃、対心理、対諜報活動を担わせました。さらに、外国軍で活躍した高級将校の入隊を呼びかけ、戦時に将校の補充源となる護国軍や学徒護国団を編成しました。しかし、これらの組織は後任の申性模によって政治的な理由で解体されました。

李範奭は、第2代大統領選挙で李承晩に取り入ろうとし、暴力団を使ってテロを計画するなど、悪名を轟かせました（釜山政治波動）。その後、自由党政権下では政治の表舞台から遠ざかっていました。1961年には民族青年団系の軍人によるクーデター未遂事件で逮捕されましたが、すぐに釈放。同年、忠清南道から参議院議員に当選し、1963年には国民の党の設立に参加し、同党最高委員を務めました。

1972年5月11日に死去。息子はアメリカで生活しており、孫の一人は米海兵隊に所属していました。

李範奭の生涯は、独立運動から政治の中枢まで、激動の時代を生き抜いた人物として、その功績と足跡は、今日でも多くの人々に語り継がれています。

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