国民共和国軍 (ロシア)

国民共和国軍（NRA）とは

国民共和国軍（NRA：Национальная республиканская армия）は、プーチン政権を暴力的に打倒することを目的とする、ロシア国内の地下パルチザン組織とされています。このグループは、ロシアの反政府武装勢力による同盟であるとされる「イルピン宣言」のメンバーであると主張しています。

NRAの活動と主張

NRAの存在が公に知られるようになったきっかけは、2022年8月に発生したロシア人ジャーナリスト、ダリア・ドゥギナの暗殺事件です。元ロシア国家院議員のイリヤ・ポノマリョフは、この暗殺事件にNRAが関与していたことを主張し、過去数ヶ月にロシア国内で多くのパルチザン活動が行われていたと述べています。ポノマリョフは、NRAの代表者と2022年4月から連絡を取っており、自身の役割を宣伝、逃亡者の支援、技術支援の提供に限定していると説明しています。

NRAは、ロシア国内の軍の入隊・徴兵センターへの放火事件にも関与しているとされています。また、YouTubeチャンネル「2月の朝」やテレグラムチャンネル「ロスパルチザン」を通じて、直接行動を奨励するメッセージを発信しています。ドゥギナ暗殺事件は、これらの活動がエスカレートした結果であると、NRAの支持者であるポノマリョフは主張しています。

NRAに対する疑念

しかしながら、NRAの存在と活動については多くの疑問が呈されています。ドゥギナ暗殺事件の報道では、NRAの存在やその関与について独立した検証はされていません。また、ロシアの反体制組織である「ロシア行動委員会」は、ポノマリョフが「ロシア領土へのテロ攻撃を呼びかけた」として、同委員会の「自由ロシア会議」のブラックリストにポノマリョフを掲載しています。

さらに、ロシア連邦保安庁（FSB）は、ドゥギナ暗殺はウクライナ市民のナタリア・ヴォフクによる犯行であると発表しており、NRAの関与を否定しています。ポノマリョフは、自身の情報源がヴォフクの関与を否定していると述べていますが、事件の真相は依然として不明な点が多く残されています。

NRAの組織構造

ポノマリョフによれば、NRAは組織というよりも、区画化された自律的な細胞からなる「ネットワーク」であり、「やや左寄りの傾向」を持つとされています。NRAは、社会正義を重視し、オリガルヒを排除し、プーチン政権の新自由主義的なアプローチから距離を置くことを目指しているとされています。

NRAの代弁者とされる人物は、ポノマリョフの他に「アレクサンドル」という人物が知られています。アレクサンドルは、NRAの目的を「当局、そのイデオロギー、そのメディアの手先に対して散発的な攻撃を行うこと」であると説明しており、組織内に治安機関や法執行機関の元職員もいると主張しています。

NRAのシンボル

NRAは、プーチン政権が使用する三色旗の代わりに、白青白旗を使用しています。この旗は、自由ロシア軍団やロシアのニュースチャンネル「2月の朝」も採用しており、平和の象徴、特に2022年のロシアによるウクライナ侵攻に対する反対のシンボルとして使用されています。

NRAの信憑性に関する議論

NRAの存在や主張については、多くのメディアや専門家がその信憑性に疑念を抱いています。AP通信やガーディアンは、NRAの犯行声明を確認できなかったと報じており、ロイターも「（ポノマリョフの）主張とグループの存在は独立して検証できなかった」と伝えています。

また、ドイツの放送局ドイチェ・ヴェレは、NRAのマニフェストに、「我々のように戦おう、我々と共に戦おう、我々よりも上手く戦おう！」というスローガンが含まれていることを指摘し、このスローガンが東ドイツのテレビ番組からインスピレーションを得ている可能性を指摘しています。これらの点からも、NRAの実態は依然として謎に包まれており、その活動や主張については慎重な検証が必要とされています。

結論

国民共和国軍（NRA）は、プーチン政権打倒を掲げる謎に包まれた組織です。ジャーナリストの暗殺事件に関与したと主張する一方で、その存在や活動は独立して検証されていません。NRAの主張や情報については、今後の動向と合わせて慎重に精査していく必要があります。

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