国民突撃銃

国民突撃銃（Volkssturmgewehr）

国民突撃銃（Volkssturmgewehr, VG）は、第二次世界大戦末期、ナチス・ドイツが国民突撃隊の武装を目的に開発した簡易小銃の総称です。多くの資料が失われ、現存数も少ないため、不明な点が多く、制式名称も存在しなかったことから、様々な名称で呼ばれていました。

開発経緯：簡易武装計画

1944年末、戦況が悪化の一途を辿る中、ナチス・ドイツは国民突撃隊を組織し、国民を動員しました。しかし、装備不足は深刻で、国防軍や武装親衛隊でさえ十分な装備を確保できない状況でした。そこで、短期間で大量生産可能な武装を開発する「簡易武装計画（Primitiv-Waffen-Programm）」が発動されました。

多くの企業がこの計画に参加し、7.92x57mmモーゼル弾または7.92x33mm弾を使用する各種簡易小銃が開発されました。これらは国民突撃銃（Volkssturm-Gewehr, VG）あるいは国民銃（Volksgewehr）と総称され、ボルトアクション式と自動小銃が混在していました。

1944年11月には、アドルフ・ヒトラーに各種VGのデモンストレーションが行われました。ヒトラーは、弾倉を備えない単発式小銃を却下し、弾倉容量は10発程度が望ましいとしました。グストロフ製の自動小銃については、高価で製造コストがStG44と同程度であり、弾薬消費が激しいことを批判しました。

しかし、第三帝国の崩壊が迫る中、ドイツ全土の通信連絡は途絶え、組織的な生産体制を構築することは不可能でした。最終的に、各地の大管区指導者たちが地域ごとに独自の武装生産を行うことになり、各VGの最終的な生産数は不明です。

各VGの概要

VG-1（ワルサー社）: 原始的な回転式ボルトアクション小銃。プレス加工部品を多用し、入手可能なあらゆる木材で銃床を成形。G43自動小銃用の弾倉を使用。量産時のコストは1丁あたり5ドル以下と推定されています。
VG-2（シュプレーヴェルク社）: VG-1と類似のボルトアクション小銃。プレス加工で成形された機関部が特徴。空軍の余剰機関銃用銃身を流用。G43用の弾倉を使用可能でしたが、挿弾子を使用できず、手作業での装填が必要でした。
VG-3/VG45（ラインメタル社、エルマヴェルケ）: 7.92x33mm弾を使用するボルトアクション小銃。2万5,000丁分の発注記録があるものの、製造工場の爆撃により本格的な生産は行われず。エルマヴェルケでも同型の試作品が製造されました。
VG-5/VK-98（ステアー社）: 非常に単純化された単発式ボルトアクション小銃。Gew98と同等の機関部を使用し、内蔵弾倉はなく、1発ずつ手作業で装填。Gew98の銃身や余剰機関銃用銃身を加工して使用。安全装置は備わっていませんでした。

グストロフ社の国民突撃銃

グストロフ社では、カール・バルニツケ技師の設計により、自動小銃型の国民突撃銃（VG-45）を開発しました。1945年1月から終戦まで生産され、約1万挺が製造されたと推定されています。

この銃は、StG44突撃銃と同様の7.92x33mmクルツ弾を使用し、着脱式弾倉も共通（10発または30発入り）でした。バルニツケ・システムと呼ばれるガス遅延ブローバック機構を採用しており、この構造は後にH&K P7拳銃などで使用されました。

VG-45の構造は、自動拳銃や短機関銃に近く、バレルジャケットの内側にバネが内蔵され、射撃時にはバレルジャケット全体が後退・前進します。基本的に半自動（セミオート）ですが、一部にはセレクティブ・ファイア機構を搭載したものも存在したとされます。バリエーションとして、フォアグリップ付きの「MP508」も存在します。

戦後

ドイツの銃器メーカーであるSport-Systeme Dittrich社が、VG 1-5のクローン銃をBD 1-5の名称で製造・販売しています。半自動専用で、フレームはステンレス製であり、仕上げはオリジナルよりも良好です。

関連項目

国民突撃隊
MP3008 - 簡易武装計画で設計された簡易短機関銃
H&K P7 - VG-45と同様のバルニツケ・システムを採用
StG44 - VG-45と同一の弾薬を使用する突撃銃
簡易小銃 - 大日本帝国における同様の武装計画
国民拳銃

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