国立近代美術館 (フランス)

国立近代美術館 (Musée national d'Art moderne, MNAM)

パリ4区のポンピドゥー・センターに位置する国立近代美術館は、20世紀から21世紀の近現代美術を専門とする美術館です。約10万点にも及ぶ膨大なコレクションは、ヨーロッパで最大規模を誇り、ニューヨーク近代美術館に次ぐ世界第二位の規模を誇ります。ピカソ、マティス、カンディンスキー、シャガール、ダリなど、近現代美術史を彩る巨匠たちの作品を数多く所蔵しており、その多様性に富んだコレクションは、世界中から研究者や美術愛好家を惹きつけてやみません。

展示内容

美術館はポンピドゥー・センターの複数の階層を使用しており、常設展では主に5階に近代美術、4階に現代美術の作品を展示しています。6階では企画展が開催され、時代やテーマを問わず、常に新鮮な作品との出会いを提供しています。

常設展では、フォーヴィスム、キュビスム、シュルレアリスム、抽象表現主義など、様々な美術運動の作品が年代順、または画家の流派ごとに展示されています。これ以外にも、グラフィックアート、写真、映像作品、インスタレーションなど、多様なジャンルの作品を鑑賞することができます。

また、美術館の一部として、彫刻家コンスタンティン・ブランクーシの遺作を展示するアトリエ・ブランクーシもポンピドゥー・センター広場脇に存在します。ブランクーシの創作活動の空間をそのまま残すように設計されており、彼の芸術世界を深く理解するのに貴重な場所です。

歴史

国立近代美術館の歴史は、1750年にルイ15世によって設立されたリュクサンブール美術館にまで遡ります。当初は王室の美術コレクションを収蔵していましたが、1818年以降は、没後10年を経た画家の作品をルーヴル美術館に移管し、それ以外の作品を展示することで、フランスにおける最初の現代美術館としての役割を担うようになりました。

その後、リュクサンブール美術館が手狭になるにつれて、近代美術館の設立が検討されました。1937年には、パリ万国博覧会に合わせてパレ・ド・トーキョー（現・パリ市立近代美術館）が建設され、国立近代美術館も同建物内に併設される予定でしたが、戦争の影響により開館は1947年に延期されました。

1977年のポンピドゥー・センター開館に伴い、フォーヴィスム以降の作品が移管されました。現在、ポンピドゥー・センター内の国立近代美術館は、近代美術を代表する名作の数々と、現代美術の革新的な作品を同時に鑑賞できる、世界屈指の美術館としてその地位を確立しています。

1992年には、産業創造センター(CCI)が国立近代美術館に統合され、そのコレクションも同美術館に収蔵されました。CCIはインダストリアルデザインに関する資料を多く所蔵しており、美術館のコレクションをさらに多様化させる要因となりました。

所蔵品

国立近代美術館のコレクションは、絵画や彫刻といった造形芸術にとどまりません。グラフィックアート、写真、実験映画、ビデオアート、ニューメディアアート、そしてインダストリアルデザインまで、幅広い分野を網羅した作品群が所蔵されています。

これらのコレクションは、アーティストからの寄贈や、美術品収集家からの寄付によって形成され、現代美術の歴史を理解する上で非常に重要な役割を果たしています。

カンディンスキー図書館

2002年に開館したカンディンスキー図書館は、20世紀および21世紀の芸術に関する専門図書館です。書誌、古文書、写真、視聴覚資料など、多様な資料を収集し、特に視覚芸術とその関連分野の研究に貴重な資源を提供しています。この図書館は、研究者のみ利用可能です。

日本との関わり

国立近代美術館のコレクションは、日本においても数々の展覧会を通して紹介されています。東京都現代美術館や国立新美術館などで開催された展覧会では、マティスやピカソといった巨匠の作品から、現代美術家の作品まで、多様な作品が紹介され、日本における近現代美術への理解を深める上で大きな役割を果たしました。 またジャポニスム2018では池田亮司氏や安藤忠雄氏の作品を紹介する企画展も開催されました。

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