国鉄キハ56系気動車

キハ56系気動車

キハ56系気動車は、日本国有鉄道（国鉄）が1961年に北海道向けに設計・製造した優れた急行形気動車です。この気動車は、キロ26形、キハ27形、キハ56形の3つの形式から成り、その設計思想に基づいています。特に、キハ58系気動車の系統に属し、北海道の厳しい気候条件に適した耐寒・耐雪装備が施されているのが特徴です。これにより、蒸気機関車牽引の客車急行列車からの移行が進み、速度と設備の向上に実績を持ちました。しかし、1980年代以降は急行列車やローカル路線の廃止に伴い、老朽化が進み、2002年には全車両が運用を終了しました。

開発の背景と経緯

1950年代の初め、北海道では蒸気機関車が引く客車列車が急行列車の一般的な形態でしたが、その運行は速度が遅く、長距離輸送には不向きでした。また、耐寒性を持つ車両の製造が少なかったため、道内の運用車両は常に不足していました。こうした状況に対処するため、キハ12形のような普通列車用気動車も運行されたものの、急行としては十分な性能を持っていませんでした。

1957年には、釧網本線でキハ12形を使った準急「摩周」が運転を開始し、これが北海道における気動車急行の先駆けとなりました。以降、札幌地区を中心に気動車準急網が整備されていきましたが、使用される車両は主に普通列車用の車両ばかりでした。他方、本州で開発されたキハ55系は、全国の準急列車に広がり、北海道でも導入が試みられましたが、寒冷地仕様ではなかったため、冬期には再び本州に返却される事態となっていました。

1960年7月には、初めての気動車急行列車「すずらん」が運行され、速達性が求められました。しかし、55系の耐寒性問題が解決されない中、急行化が進む気運が高まり、より優れた設備を持つ急行形気動車が求められるようになります。これがキハ56系の開発へと繋がっています。

特徴と設計

キハ56系は、多くの点でキハ58系と共通しており、広幅車体や高運転台構造を持ちながら、寒冷地向けの多様な耐寒・耐雪装備を導入しています。外観的には、耐寒性の確保から小型の客室窓が特徴的であり、またエンジン冷却水を利用する温水暖房システムも導入されています。

また、キハ56系では、床材には木張りが用いられ、冬期の耐久性が考慮されています。ドアや汽笛周りには特殊な凍結防止対策が施されており、厳寒の北海道における運用に適した車両が実現されました。

各形式の特徴

キハ56形はこのシリーズの基本形で、1961年から1968年までに121両が製造されました。キハ27形については、同じく1エンジンを装備した2等車ですが、全体で102両が製造されています。キロ26形はこの系列唯一の1等車であり、52人を定員とし快適なリクライニングシートが設置されています。

改造車両

改造によりお座敷車両やカーペットカーなどの特殊仕様も登場しましたが、最終的な運用の中で全て廃車されました。特に、キロ29形は団体専用列車として運用され、特別な塗装が施されたことでも知られています。また、1985年に登場したリゾート気動車キハ59系は、観光需要に応じたタイプで、数々の改造が施されていました。

終焉と現在の状況

キハ56系は実に多くの歴史を持ちましたが、2002年には全ての運用から姿を消しました。最後まで在籍した車両は、解体処分にされるなど、時代の移り変わりを象徴する存在となりつつあります。これらの気動車は、北海道の交通史において重要な役割を果たし、多くの人々に親しまれてきました。

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