国鉄クサ9000形貨車

国鉄クサ9000形貨車

国鉄クサ9000形貨車は、1967年に川崎車輛で1両のみ試作された、日本国有鉄道（国鉄）のカンガルー方式ピギーバック輸送用貨車です。当時、コンテナ輸送が普及しつつある中で、アメリカで普及していたピギーバック輸送に着目し、日本での導入が検討されました。しかし、日本の車両限界はアメリカに比べて小さく、トラックをそのまま貨車に積載することは困難でした。そこで、車両限界内に収めるために、カンガルー方式と低床方式の2つの方式が考案され、クサ9000形はそのうちカンガルー方式の試作車として開発されました。

カンガルー方式とは

カンガルー方式は、フランスで考案されたピギーバック輸送の方式で、トレーラーのタイヤを貨車の台枠内側に設けた窪みに収納することで、貨車上のトレーラーの高さを下げて車両限界に収めるものです。トレーラーを収納した状態では、トレーラーのボディのみが貨車の上にコンテナのように載っているように見えます。

構造

クサ9000形貨車の全長は17,790mm、全幅は2,610mm、全高は1,950mmで、自重は21.3t、荷重は21tです。外観はコンテナ車によく似ていますが、内部にはトレーラーのタイヤを収納する窪みが設けられています。台車は、ワキ10000形試作車に用いられたTR94形を流用しています。これは、タイヤ格納部があるため通常のブレーキ装置を装備できず、台車にブレーキシリンダーが内蔵されたものを採用したためです。ブレーキは、自動空気ブレーキと手ブレーキが搭載されています。

貨車にはトレーラーを2台搭載でき、タイヤ格納部も2箇所に設けられています。荷役は専用のトラクターを使用し、貨車の上を自走してタイヤ格納部の傾斜部から落とし込み、また引き上げます。格納部には緊締装置が備えられており、タイヤを固定して輸送中の揺れを防ぎます。トレーラーが車体を移動する際には、他のタイヤ格納部の上を通過できるように塞ぎ板が用いられており、手動で開閉できます。また、隣接車両へ渡れるようにするための折りたたみ式渡り板も装備されています。

搭載するセミトレーラーも同時に試作され、ST1・ST2の番号が与えられました。国鉄の財産区分としては機械扱いです。自重3.5t、荷重7tで、満載時10.5tとなります。全長6,219mm、全幅2,320mm、全高2,050mmで、内容積は26.6m³と10tコンテナより小型です。塗装は銀色で、前妻部には荷役用トラクターと接続するピンが設けられています。タイヤはダブルタイヤを後部に1軸装備しており、トラクターと連結しない時に立てておくためのスタンディングジャッキが前部に設置されています。

試験とその後

完成後、クサ9000形はしばらくの間試験が行われ、1968年8月からは淀川駅常備の扱いで、淀川 - 塩浜操間で数ヶ月に渡って輸送試験が行われました。しかし、荷役が煩雑であること、コンテナ輸送が拡大したことなどから、実用化には至りませんでした。その後、塩浜操駅でしばらく放置され、1972年度に操車場の貨車入換に使用するリニアモーターカーの保守作業用車として、職用車ヤ250形に改造され、形式消滅となりました。

参考文献

* 渡辺 一策『RM LIBRARY 84 車を運ぶ貨車（下）』（初版）ネコパブリッシング、2006年。ISBN 4-7770-5173-0。

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