国鉄シキ80形貨車

国鉄シキ80形貨車の概要

国鉄シキ80形貨車は、1936年から1942年にかけて、田中車輛によって製造された特別な貨車であり、合計で7両が作られました。この貨車は、主に信濃川発電所の資材輸送に使用されることを目的に設計されたものであり、その仕様は大物輸送に特化した独特な構造を持っています。

基本的な仕様

シキ80形は30トンの貨物を積載可能な設計であり、魚腹形の台枠を持った長物車のようなフォルムをしています。全長は11,800mm、車体長は11,000mmです。特筆すべきは、車両の中央部に長さ4,500mm、幅2,140mmの亀甲形の穴があり、ここに貨物を落として積載する仕組みです。この落し込み式の構造は、効率的な積み込みが可能ですが、希望する荷重に対する許容荷重が低く、折損事故が頻発する問題も抱えていました。

構造と機能

貨物をしっかり支えるため、落し込み穴の底には着脱可能な横梁が設置されています。この横梁は、貨物を支えるだけでなく、その重さを一部負担する役割も果たしていますが、車両によって横梁の本数が異なるため、積載時の安定性にはばらつきが見られました。

台車はアーチバー式の2軸ボギー台車TR20形を2基装備し、これにKD180形のブレーキが併設されています。この組み合わせにより、安定した走行と安全性が確保されています。

利用の歴史

低床式の大物車がトレーラーに取って代わられていく中で、シキ80形は鉄道輸送に特有の機能を持っていたため、長い間有効利用され続けました。特に資材の重量や形状に応じた柔軟な対応ができるため、需要は高かったのです。しかし、1986年度にはシキ80形の最後の2両が廃車となり、その形式は消滅してしまいました。

その後、シキ80形の特異な設計や機能についての評価が高まり、過去の産業史において重要な役割を果たした貨車として記憶されています。

参考文献

• - 吉岡心平『大物車のすべて 中』ネコ・パブリッシング、2007年。
• - 貨車技術発達史編纂委員会『日本の貨車 -技術発達史-』日本鉄道車輌工業会、2009年。

シキ80形貨車は、日本の鉄道輸送の歴史を語る上で欠かせない存在であり、その特異なデザインと機能は、今も多くの人々に語り継がれています。

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