国鉄1100形蒸気機関車

国鉄1100形蒸気機関車：黎明期の鉄道を支えた小型機関車

国鉄1100形蒸気機関車は、かつて日本国有鉄道（国鉄）の前身である鉄道院・鉄道省に所属したタンク式蒸気機関車です。その多くは、官設鉄道や私設鉄道が建設用として輸入した、車軸配置0-6-0(C)の小型機関車でした。イギリスのナスミス・ウィルソン社で設計されたものが原型ですが、ダブス社、ベイヤー・ピーコック社、シャープ・スチュアート社でも同等の機関車が製造されました。

多様な出自と国有化

1906年から1907年にかけて、鉄道国有法により多くの私設鉄道が買収・国有化され、これらの機関車も官設鉄道に編入されました。1909年には、鉄道院の車両形式称号規程が制定され、ナスミス・ウィルソン社製のものが1100形、シャープ・スチュアート社製のものが1060形、ダブス社製のものが1150形とされました。また、同系統でやや大型のものは、ナスミス・ウィルソン社製が1200形、ダブス社製が1230形、川崎造船所製が1250形となりました。

小型ながら牽引力に優れていたことから、地方鉄道の建設や開業に際して払い下げられ、長きにわたって使用されました。中には、鉄道の国有化によって再び国有鉄道籍となったものもありましたが、その際に別の形式番号を与えられたものもありました。

1100形（ナスミス・ウィルソン製）の詳細

1次車

1100形は、鉄道院の前身である鉄道作業局が、建設用にナスミス・ウィルソン社に発注したのが始まりです。1886年に製造された最初の機関車は、日本鉄道の福島・塩竈間の建設工事で使用されました。その後、正式に日本鉄道の所有となり、22号機と改番されました。

2次車

1887年には、同形車6両が追加発注されました。これらの機関車は、弁装置がジョイ式ウェッブ型からスチーブンソン式アメリカ型に変更され、ランボードの形状も変更されました。このグループのうち、2両が日本鉄道に、残りが官設鉄道で使用されました。官設鉄道の機関車は、後にそれぞれ55, 57, 60, 63号機と改番されました。

山陽鉄道

山陽鉄道は、1888年にナスミス・ウィルソン社から3両を購入しました。これらの機関車は、弁装置がジョイ式ウェッブ型に戻され、ランボードも新しい形態に変更されました。しかし、この3両は他事業者に譲渡されています。2両は北海道炭礦鉄道に譲渡され、1両は官設鉄道に譲渡されました。

その他の鉄道

京都鉄道、北越鉄道、中越鉄道、豊川鉄道、中国鉄道、河陽鉄道でも、建設・開業用としてナスミス・ウィルソン社製の機関車が導入されました。これらの機関車は、各鉄道で独自の番号が付与され、使用されました。中越鉄道の機関車は、国有化の際に1100形ではなく、1050形として扱われました。

鉄道院形式称号規程制定による改番

1909年の鉄道院形式称号規程制定により、ナスミス・ウィルソン製の14両が1100形として整理されました。多くの機関車が複数の鉄道会社を経由し、複雑な番号の変遷をたどりました。

国有化後の動向

国有鉄道籍となった1100形は、小型であることから営業用には使用されず、建設用や入換用に使用されました。1912年から廃車が開始され、1918年までに形式消滅となりました。しかし、廃車された機関車は、地方鉄道に払い下げられ、再び活躍の場を得ました。

1100形の主要諸元

全長: 7,090mm
全高: 3,429mm
全幅: 2,235mm
軌間: 1,067mm
車軸配置: 0-6-0(C)
動輪直径: 914mm
弁装置: ジョイ式ウェッブ型またはスチーブンソン式アメリカ型
シリンダー: 330mm×457mm
ボイラー圧力: 9.8kg/cm2
火格子面積: 0.74m2
全伝熱面積: 45.9m2
運転整備重量: 21.35t

1150形・1270形（ダブス製）

ダブス社製の1150形・1270形は、1100形と同系統の小型蒸気機関車です。関西鉄道や西成鉄道が導入したものが該当します。これらの機関車は、1100形の第1タイプに類似した形態を持ち、シリンダーが水平に装備されているのが特徴です。

関西鉄道が導入した2両のうち、1両は七尾鉄道を経て1270形となり、もう1両は上武鉄道を経て各地で使用されました。西成鉄道が導入した4両は、1150形となり、その後、秋田鉄道や佐久鉄道などに払い下げられました。

1060形（シャープ・スチュアート製）

シャープ・スチュアート社製の1060形は、1100形と同系列の小型タンク式蒸気機関車です。1896年に2両のみ製造され、鉄道作業局に納入されました。外観は1100形の第1タイプに類似しており、弁装置はジョイ式ウェッブ型です。これらの機関車は、建設用に使用された後、内務省土木局や中越鉄道に譲渡されました。

ベイヤー・ピーコック製

ベイヤー・ピーコック社製の1100形同系機は、東京市や東武鉄道に導入されました。東京市が購入した2両は、後に台湾総督府鉄道に引き継がれ、東武鉄道が購入した2両は、建設用に使用された後、南越鉄道や日本電興に譲渡されました。

1040形

日本鉄道が自社大宮工場で製作した1040形は、W3/3形を基本に模倣製作したものです。弁装置はスチーブンソン式アメリカ型で、ランボードのデザインが特徴的です。国有化後、1916年から1919年にかけて全車が民間に払い下げられました。また、模倣機が唐津鉄工所で製作され、常総鉄道などで使用されました。

脚注

注釈

[ここには注釈はありません。]

出典

[ここには出典情報はありません。]

参考文献

臼井茂信「国鉄蒸気機関車小史」1958年、鉄道図書刊行会刊
臼井茂信「日本蒸気機関車形式図集成」1969年、誠文堂新光社刊
臼井茂信「機関車の系譜図 1」1972年、交友社刊
川上幸義「私の蒸気機関車史　上」1978年、交友社刊
金田茂裕「形式別 国鉄の蒸気機関車Ⅰ」1978年、エリエイ出版部 プレス・アイゼンバーン刊
金田茂裕「形式別 国鉄の蒸気機関車Ⅱ」1985年、エリエイ出版部 プレス・アイゼンバーン刊
* 金田茂裕「日本蒸気機関車史 私設鉄道編I」1981年、エリエイ出版部 プレス・アイゼンバーン刊


以上が、国鉄1100形蒸気機関車に関する詳細な情報です。この機関車は、日本の鉄道黎明期を支えた重要な存在であり、その歴史は多くの人々に語り継がれるべきものです。

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