国鉄7720形蒸気機関車

7720形蒸気機関車：樺太鉄道が生んだ酷寒地仕様のテンダ機

7720形は、かつて日本国有鉄道（国鉄）に在籍した蒸気機関車です。元々は樺太鉄道が1927年から1936年にかけて製造した、15両の2-6-0(1C)形2気筒単式の過熱式テンダ機関車でした。

誕生と変遷

1941年、樺太鉄道が買収され樺太庁鉄道となると、この機関車群もその一部となります。さらに1943年、樺太の内地化に伴い国有鉄道に編入され、晴れて国鉄籍を得ました。この際、形式名が60形から7720形に改称されています。

製造年ごとの内訳は以下の通りです。

1927年製造（60 - 63 → 7720 - 7723）：汽車製造製
1930年製造（64 - 68 → 7724 - 7728）：汽車製造製
1934年製造（69 - 72 → 7729 - 7732）：日本車輌製造製
1936年製造（73, 74 → 7733, 7734）：汽車製造製

設計と特徴

7720形の設計は、1925年に汽車製造が常総鉄道に納入した2-6-2(1C1)形タンク機関車や、1918年に台湾総督府鉄道に納入した2-6-2(1C1)形過熱タンク機関車のテンダ機関車版と見なせます。テンダ（炭水車）は鉄道省6700形と同様のものが採用されました。

外観は、車軸配置が同じ国鉄8620形に似ていますが、動輪直径が1,250mm（1927年製は1,220mm）と小さく、ボイラーも細いため、歩み板との間に大きな隙間があります。また、運転室下部に垂れがなく、歩み板と下端が同一レベルである点も特徴です。

特筆すべきは、酷寒地での使用を考慮した設計です。運転室は密閉式で、炭水車の前端部にも仕切りを設け、運転室と布で繋ぐことで寒気の侵入を防いでいました。製造当初はデフレクタ（除煙板）を装備していませんでしたが、後に全車に取り付けられています。

樺太鉄道線は地盤が軟弱なツンドラ地帯に敷設されていたため、7720形の最大軸重は10.83tと軽量に抑えられています。性能的には、後の国鉄C56形と同程度でした。

運用と終焉

樺太鉄道では、主に平坦な落合 - 白浦間、元泊 - 敷香間で客貨両用に使用されました。内地編入後の1944年には、7725と7734が真岡、7720 - 7723が白浦、7724, 7726 - 7733が敷香に配置されています。

しかし、1945年の敗戦により樺太がソビエト連邦に占領されると、7720形も接収され、その後の消息は明らかになっていません。

主要諸元

全長：14,948mm
全高：3,658mm
全幅：2,630mm
軌間：1,067mm
車軸配置：2-6-0(1C)
動輪直径：1,220mm(7720 - 7723), 1,250mm(7724 - 7734)
シリンダー（直径×行程）：406mm×558mm
弁装置：ワルシャート式
ボイラー圧力：13.0kg/cm2（≒1.275MPa）
火格子面積：1.49m2
全伝熱面積：84.56m2
過熱伝熱面積：19.51m2
全蒸発伝熱面積：65.03m2
煙管蒸発伝熱面積：57.41m2
火室蒸発伝熱面積：7.62m2
ボイラー水容量：2.97m3
大煙管（直径×長サ×数）：127mm×3,429mm×15
小煙管（直径×長サ×数）：45mm×3,429mm×77
機関車重量（運転整備）：31.80t
機関車重量（空車）：34.75t
機関車動輪上重量（運転整備）：27.60t
動輪軸重（平均）：10.83t
炭水車重量（運転整備）：27.60t
炭水車重量（空車）：12.70t
水タンク容量：11.40m3
燃料積載量：3.56t
シリンダ引張力：8,330kg(7720 - 7723), 8,130kg(7724 - 7734)
ブレーキ装置 : 手ブレーキ、真空ブレーキ

参考文献

臼井茂信「日本蒸気機関車形式図集成」1969年、誠文堂新光社刊
臼井茂信「機関車の系譜図 3」1976年、交友社刊
金田茂裕「形式別 国鉄の蒸気機関車 III」1985年、エリエイ出版部 プレス・アイゼンバーン刊
川上幸義「樺太の機関車」鉄道ピクトリアル 1966年8月号(No.187)

関連項目

* 南海C10001形蒸気機関車 - 本形式の基本設計を流用して製造された。

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