國學院大學本源氏物語

国学院大学本源氏物語：室町時代の豪華な合作

国学院大学図書館が所蔵する国学院大学本源氏物語は、室町時代後期に書写されたと推定される源氏物語の写本です。54帖全25冊という揃い本であり、その価値は非常に高いと言えます。

豪華な合作：多くの筆写者

この写本は、単独の筆写者によって書かれたものではなく、複数の筆写者による寄合書きであることが大きな特徴です。極札（筆写者を示す札）によると、足利義政やその正室である日野富子をはじめ、三条西実隆卿女、三条西公条北方、甘露寺元長、梶井宮堯胤法親王、正親町公兼、下冷泉政為、山科言国など、21名もの著名な人物が筆写に関わっていたとされています。それぞれの筆写者の書風や書き込みから、当時の文化や社会状況を垣間見ることができる貴重な資料となっています。

本文系統の複雑さ

国学院大学本源氏物語の本文系統は、巻によって大きく異なっています。例えば、「柏木」「鈴虫」「夕霧」「若菜下」「蜻蛉」「手習」「夢浮橋」といった巻は河内本系統に、「須磨」「若菜上」は別系統の本文に、「その他の多くの巻」は青表紙本系統に属するとされています。このように巻ごとに本文系統が異なることは、写本の成立過程における複雑な経緯を示唆しています。

後世の補筆

「御法」「幻」「匂宮」「紅梅」「竹河」「東屋」「浮舟」の7帖は、竹屋光忠による後世の補写であると考えられています。これらの補写部分の存在は、写本が時代を超えて大切に保存され、必要に応じて補修が行われてきたことを示しています。また、本文の異同と合わせて、当時の写本制作や伝播の実態を検討する上で重要な要素となります。

国学院大学図書館の他の源氏物語写本

国学院大学図書館には、この国学院大学本源氏物語以外にも、貴重な源氏物語の写本が所蔵されています。その一つに、「伝藤原為家筆本」と伝わる花宴巻のみの写本があります。これは河内本系統の本文を持つとされ、「家」という写本記号で河内本源氏物語校異集成に収載されています。これらの写本は、源氏物語の研究において重要な資料として活用されています。

研究への貢献

国学院大学本源氏物語は、その豪華な装丁、多くの筆写者、そして巻によって異なる本文系統など、多くの特徴を持っています。これらの特徴は、単なる写本としてだけでなく、室町時代の文化・社会・歴史を理解する上で貴重な資料となっています。研究者たちによって詳細な調査・分析が行われ、その成果は学術論文や書籍などで発表されています。例えば、針本正行氏や新山春道氏による研究論文では、国学院大学本源氏物語の一部巻について、影印本を用いた詳細な分析が行われています。これらの研究は、この貴重な写本をより深く理解し、その価値を再認識する上で大きな役割を果たしています。デジタルライブラリーによる公開も、より広範な研究への貢献に繋がるものと考えられます。

国学院大学本源氏物語は、今後も研究者によって継続的に研究され、その価値はますます高まっていくことでしょう。

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