土宜法龍

土宜法龍（どぎ ほうりゅう）：近代仏教を牽引した僧侶・仏教学者

土宜法龍（1854年8月 - 1923年1月10日）は、近代日本仏教史を代表する仏教学者であり、僧侶です。字は覚意、号は雲外、木母堂。幼名は光九。尾張国名古屋（現在の愛知県名古屋市）に生まれ、真言宗の発展に大きく貢献しました。

生涯

4歳で出家し、高野山で修行を積みました。1869年（明治2年）より高野山の伝法入壇に入ります。1876年（明治9年）には上京し、慶應義塾別科で学び、福澤諭吉の仏教保護方針のもと、釈宗演と並び慶應義塾精神界の二大明星と称されました。

1881年（明治14年）に真言宗法務所課長に就任。渡辺雲照(釈雲照)を補佐し、維新の神仏分離で途絶えていた後七日御修法を東寺にて再興しました。また、十善戒を守ることを主眼とした「十善会」を主宰し、山岡鉄舟、久邇宮朝彦、小松宮彰仁らが参禅しました。

1893年（明治26年）には、シカゴ万国宗教会議に日本代表として参加。釈宗演（臨済宗円覚寺派管長）、芦津実全（天台宗）、八淵蟠龍（浄土真宗本願寺派）らと共に渡米し、仏教に関する講演を行いました。また、パリ・ギメ美術館で仏教関係の資料調査と研究にも従事しています。

横浜正金銀行ロンドン支店長・中井芳楠の家にて南方熊楠と面会し、以来没するまで、約30年間に渡って膨大な往復書簡が交わされました。

業績

土宜法龍は、伝統的な真言教学に加え、近代ヨーロッパのインド古典学、仏教学の研究方法を導入し、密教学研究の基礎を築きました。西域、チベットにも足を運び、見識を広めました。1906年（明治39年）より真言宗御室派管長に就任し、宗派の発展に尽力しました。

明治40年（1907年）朋友であった瀧見常の遷化に際し頌徳碑の文を撰述しました。

主な役職

高野山学林長
仁和寺門跡（36代）
真言宗御室派管長
真言宗各派連合総裁
高野山真言宗管長

関連情報

宣真高等学校
禅瀧寺
種智院大学
高野山霊宝館
後七日御修法

参考文献

『南方熊楠 土宜法竜 往復書簡』 飯倉照平・長谷川興蔵編、八坂書房、1990年
『木母堂全集　伝記・土宜法龍』 大空社〈伝記叢書〉1994年
『高山寺蔵　南方熊楠書翰　土宜法龍宛　1893－1922』 奥山直司ほか編、藤原書店、2010年
三田商業研究会編 編『慶應義塾出身名流列伝』実業之世界社、1909年（明治42年）6月、181-182頁。
丸山信編『人物書誌大系 30　福沢諭吉門下』日外アソシエーツ、1995年3月
奥山直司「土宜法龍とチベット」-『熊楠研究』(3), 南方熊楠資料研究会, 204-217頁, 2001-03
小田龍哉『ニニフニ　南方熊楠と土宜法龍の複数論理思考』左右社、2021年

外部リンク

大乗寺 円山派デジタルミュージアム - 土宜法龍筆「境閑意自適」

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