土岐光衡

土岐光衡：美濃源氏の嫡流、土岐氏の祖

土岐光衡（とき みつひら）は、平安時代末期から鎌倉時代初期にかけての武将であり、鎌倉幕府の御家人です。伯耆守源光長の三男として生まれましたが、伯父である光基の養子となり、美濃源氏の嫡流である土岐氏の家督を継承しました。

源平合戦における動向

治承・寿永の乱（1180年～1185年）において、光衡は当初、源氏方の挙兵にすぐには参加しませんでした。実父である源光長や兄の源光経、その他美濃源氏の一族が、源頼政の挙兵や木曾義仲の旗揚げに参加し、多くが戦死する中、光衡は静観を決め込みました。この背景には、平家が近江や飛騨の武士を味方につけて勢力を拡大していたことや、平維盛が美濃に転戦して美濃源氏の諸氏を討ち、その首を京で晒すなど、平家の圧力が強まっていたことが挙げられます。

しかし、寿永3年（1184年）になると、光衡は一族を率いて鎌倉の源頼朝軍に合流し、源氏方の勝利に大きく貢献しました。この功績により、平家滅亡後は鎌倉幕府の御家人として認められました。

鎌倉幕府御家人としての活躍

建久4年（1193年）、源頼朝が富士の巻狩を行った際には、光衡もこれに随行したとされています（『吾妻鏡』）。この時の「土岐三郎」が光衡を指すと考えられています。

また、建仁年間（1201年～1204年）には、大内氏、梶原氏に次いで美濃国の守護に任じられ、美濃国内における「兵馬指揮統率権」や「治安維持警察権」を与えられました。これにより、土岐氏は美濃国内で大きな力を持つことになりました。

土岐氏の発展と土岐光衡の影響

光衡は、美濃国に土着していた山県郡の源頼綱の系統や、方県郡の源重宗の系統など、他の美濃源氏諸氏の上に立ち、土岐氏を美濃源氏の主流へと押し上げました。本拠地とした美濃国土岐郡の一日市場館から「土岐」を号したとされ、実質的な土岐氏の祖とされることが多いです。

また、氏寺として天徳寺、菩提寺として光善寺を建立し、天台宗の寺院を開基しました。これらの寺院は、土岐氏の歴史と深く結びついています。

晩年と子孫

光衡は、元久3年（1206年）3月20日に亡くなり、光善寺に葬られました。

系図によると、光行と光時の二人の子がおり、嫡男の光行が土岐氏を継承しました。また、次男の光時は浅野氏の祖となり、その子孫は浅野家（広島藩、赤穂藩）、土岐頼忠、水野氏、神野氏などに分かれ、現在までその血筋を伝えています。

土岐光衡は、美濃源氏の嫡流である土岐氏の基礎を築いた重要な人物であり、その後の歴史に大きな影響を与えました。

参考文献

『瑞浪市史　歴史編』　第四編　中世　第一章　鎌倉時代の郷土　第一節　美濃源氏土岐氏の発生　p240～p245　瑞浪市　昭和49年
横山, 住雄『美濃土岐氏―平安から戦国を駆け抜けた本宗家の戦い』戎光祥出版株式会社、2024年4月10日。ISBN 978-4-86403-504-0。

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