土持城夫

土持城夫（つちもち しろお）

土持城夫氏は、1938年に静岡県で生を受け、日本のポピュラー音楽シーンで作曲家、編曲家として活動しました。1998年8月27日、60歳の若さで胆管癌により惜しまれつつこの世を去りましたが、その短い生涯の中で数多くの楽曲を手掛け、日本の音楽界に確かな足跡を残しました。

氏のキャリアにおいて特筆すべき出来事として挙げられるのが、1972年の第14回日本レコード大賞における編曲賞の受賞です。この栄誉は、当時大ヒットを記録した平田隆夫とセルスターズの楽曲「ハチのムサシは死んだのさ」（作詞：内田良平、作曲：平田隆夫）の編曲が高く評価されたことによるものです。この楽曲は、その印象的なメロディと土持氏による斬新なアレンジが相まって、多くの人々に強烈なインパクトを与えました。

土持氏は特定のジャンルに留まらず、非常に幅広い音楽活動を展開しました。歌謡曲、フォークソング、アイドルソング、さらにはテレビ番組のテーマ曲に至るまで、多様なアーティストやメディアに楽曲を提供し、またはそのサウンドを彩る編曲を担当しました。彼の作品リストは、彼がいかに当時の日本の音楽シーンの多角的な側面に貢献していたかを如実に示しています。

以下に、土持城夫氏が関わった主な楽曲の一部を、担当別に分けてご紹介します。

主な編曲作品

児島美ゆき「どういうわけか」（1970年）
アンドレ・カンドレ（後の井上陽水）「花にさえ、鳥にさえ」（1970年）
夏夕介「涙が燃えて」（1970年）
パープル・シャドウズ「さよならはこわくない」（1971年）
平田隆夫とセルスターズ「ハチのムサシは死んだのさ」（1972年）
平田満「愛の狩人」（1976年）
ザ・サクセス「うちの娘に限っては」
山本リンダ「限りなく透明に近いダンス」（1976年）
山本リンダ「いいのかな」
山本リンダ「ちょっと違うんだなア」
山本リンダ「人形芝居」
山本リンダ「めぐり逢える日まで」

主な作曲作品

フォー・スラッガーズ「男どアホウ甲子園」「どアホウ讃歌」（1970年）※編曲も担当
入江ゆみ「レイニー・ナガサキ」（1971年）
平田隆夫とセルスターズ「悲しき地平線」
シャネル・ファイブ「ヘイ・マダム」「惚れて振られて又惚れて」
レイモン・ルフェーヴル「Jump With Kinchan」（「欽ちゃんの週刊欽曜日」テーマ、1982年）
レイモン・ルフェーヴル「男と女のポエム」
清水章吾「北国の春はまだ遠い」「真冬の桟橋」「誰れかが何処かで」「夜霧の別れ」「レイコ」
李朱朗「白い霧にぬれて」「この愛だけ」
「うわさのスタジオ」（「酒井広のうわさのスタジオ」テーマ）
石野真子「GOOD-BYは出発」
塚田三喜夫「ザ・チャンバラ」
藤原誠「たった一人の旅」
ラブ・サントス「松山慕情」
風見慎吾「OTONA BIRTHDAY」（1983年）※編曲も担当

これらの楽曲リストからも分かるように、土持氏は多才な音楽家であり、日本の歌謡曲が隆盛を極めた時代において、その独特な感性で多くの人々の心に残るサウンドを創り出しました。特に編曲においては、原曲の魅力を引き出しつつ、新たな息吹を吹き込む手腕に長けていたと言えるでしょう。

1998年に60歳で逝去されたことは誠に残念ですが、土持城夫氏が生み出した音楽は、今もなお多くの人々に愛され、聴き継がれています。彼の功績は、日本のポピュラー音楽史において重要な一頁を飾るものです。

もう一度検索