地心座標時

地心座標時（TCG）とは

地心座標時（TCG: Temps-coordonnée géocentrique）は、地球の歳差、章動、月、人工衛星といった天体の運動に関する計算において、時間の独立変数として用いられる時刻系です。

TCGの定義

TCGは、地球の中心と連動して動く座標系において、静止している時計が刻む固有時と等価です。この時計は、地球と全く同じように運動しますが、地球の重力圏外に位置しています。そのため、地球の重力による時間の遅れの影響を受けません。

1991年、国際天文学連合（IAU）の第21回総会勧告3によってTCGは定義されました。これは、定義が曖昧だった太陽系力学時（TDB）の代替案の一つとして考案されました。従来の天文学的時間尺度とは異なり、TCGは一般相対性理論に基づいて定義されており、他の相対論的時間尺度との関係は、完全な一般相対論的計量テンソルによって定義されます。

TCGの特性

TCGの基準系は地球の表面と一緒に回転せず、地球の重力ポテンシャル内にもないため、TCGの時間の進み方は地球表面の時計よりも約7.0×10⁻¹⁰（年間約22ミリ秒）だけ速くなります。このため、TCGを用いた計算で使用される物理定数の値は、通常の物理定数の値とは異なります（伝統的な値はある意味で間違っており、時間尺度の違いを補正したものです）。既存のソフトウェアをTDBからTCGに変更するのは大変な作業であり、2002年現在でも、何らかの形でTDBが使われ続けているのが現状です。

TCG尺度上の時間座標は、地球の回転に基づいた不均一な時間基準から引き継がれた、慣習的な日を示す方法で指定されます。具体的には、ユリウス通日とグレゴリオ暦の両方が使用されます。TCGは、その前身である天体暦（ET）との連続性を保つため、ユリウス通日 2443144.5（1977年1月1日00時UT）付近でETと一致するように設定されました。より正確には、TCGにおける1977年1月1日00時00分32.184秒は、国際原子時（TAI）における1977年1月1日00時00分00.000秒と正確に対応すると定義されています。これは、TAIに重力による時間の遅れの修正が導入された瞬間でもあります。

TCGの応用

TCGは、理論上の理想的な時間尺度であり、特定の現象に依存しません。実用上は、TCGを地球上の実際の時計によって実現する必要があります。地球時（TT）とTCGの間には線形関係があるため、TTを実現する方法はTCGにも適用できます。関係の詳細やTTの実現方法については、地球時の項目を参照してください。

太陽系座標時（TCB）との比較

太陽系座標時（TCB）は、太陽系全体に関する計算に使用される、TCGの類似の概念です。TCGは、TCBとは異なる参照系によって定義されているため、TCBとは線形関係にはなりません。長期的には、TCGはTCBよりも約1.6×10⁻⁸（年間約0.5秒）遅れます。さらに、地球が太陽系内を移動するにつれて、周期的な変動があります。地球が1月に近日点に近づくと、太陽の重力井戸が深くなることによる時間の遅れと、太陽に対して高速で移動することによる時間の遅れの影響で、TCGの進み方は平均よりも遅くなります。7月の遠日点では、逆の結果となり、TCGは平均よりも速くなります。

まとめ

TCGは、天体観測や精密な時間管理において重要な役割を果たします。一般相対性理論に基づいた正確な時間尺度であり、地球の重力の影響を受けないため、精密な計算に不可欠です。

関連項目

[太陽系座標時（TCB）のリンク](https://example.com/tcb'>太陽系座標時（TCB）)

参考文献

[国際天文学連合（IAU）のリンク](https://example.com/iau'>国際天文学連合（IAU）)

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