坂上浄野

坂上浄野（さかのうえ の きよの）は、平安時代初期に活躍した貴族であり、武人としても知られています。大納言・坂上田村麻呂の四男として生まれ、その武勇は若い頃から際立っていました。

経歴

浄野は、大同元年（806年）に神野親王（後の嵯峨天皇）が春宮に立てられると、春宮少進として仕え始めました。その際、親王が騎射に優れた者を選抜する機会があり、浄野は春宮少進として唯一選ばれるほど、その武芸の腕前は卓越していました。また、歩射においても、佐味香飾麻呂や飯高常比麻呂といった有力者たちとの競射で最も優れた成績を収め、騎射、歩射の両方においてその才能を認められ、親王からの寵愛を受けるようになりました。

嵯峨天皇の治世である弘仁10年（819年）には、従五位下・陸奥鎮守将軍に任命され、翌年には陸奥介も兼務するなど、東北地方の経営に深く関与しました。弘仁13年（822年）には京に戻り右近衛少将に任官、翌年には従五位上に昇進しましたが、天長元年（824年）には薩摩守、後に土佐権守へと左遷され、淳和朝の間は不遇の時代を過ごしました。

仁明天皇の時代になると、京への帰還を許され、天長10年（833年）には正五位下・陸奥出羽按察使に任じられ、再び東北地方の経営に携わることになります。承和3年（836年）には従四位下に昇進。また、承和4年（837年）には、鎮守将軍から大規模な反乱の可能性が報告されたため、援兵1000人を動員して交替で勤務させることを奏上し、許可されました。しかし、幸いにも大規模な反乱は起こらず、浄野は蝦夷の人々との友好関係を維持し、按察使としての職務を全うしました。承和6年（839年）に国司の任期を終えて帰京後、右馬頭に任じられ、承和9年（842年）には右兵衛督に任じられるなど、仁明朝の後半は武官として活躍しました。承和12年（845年）には従四位上に叙されています。

晩年は、老いと病のため、官職を辞することを望んだとされています。嘉祥3年（850年）に文徳天皇が即位すると、間もなく正四位下に叙せられましたが、同年8月4日に62歳で亡くなりました。最終的な官位は右兵衛督・正四位下でした。

官歴

以下は『六国史』に基づく浄野の官歴です。

大同元年（806年）：春宮少進（春宮・神野親王）
弘仁10年（819年）正月7日：従五位下・陸奥鎮守将軍
弘仁11年（820年）：兼陸奥介
弘仁13年（822年）：右近衛少将
弘仁14年（823年）11月20日：従五位上
天長元年（824年）：薩摩守、土佐権守
天長10年（833年）3月：正五位下、陸奥出羽按察使
承和3年（836年）正月7日：従四位下
承和6年（839年）2月18日：右馬頭
承和9年（842年）7月25日：右兵衛督
承和12年（845年）正月7日：従四位上、7月3日：兼因幡守
嘉祥3年（850年）4月17日：正四位下、5月17日：兼相模守、8月4日：卒去

系譜

父：坂上田村麻呂
母：不詳
生母不明の子女
男子：坂上当宗
男子：坂上当峰
男子：坂上当道（813-867）
男子：坂上広道
男子：坂上当澄 - 小野篁の養子

浄野には、長男の坂上当宗（鎮守将軍）、次男の坂上当峰（出羽守）、三男の坂上当道（陸奥守）の三人の男子がおり、彼らもまた東北地方の運営に深く関与しました。

脚注

参考文献

森田悌『日本後紀 （下）』講談社〈講談社学術文庫〉、2007年
森田悌『続日本後紀』（上下巻）、講談社〈講談社学術文庫〉、2010年
* 宝賀寿男『古代氏族系譜集成』古代氏族研究会、1986年

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