坂上熊毛

坂上 熊毛

坂上 熊毛（さかのうえ の くまけ）は、飛鳥時代に生きた著名な人物であり、672年の壬申の乱において重要な役割を果たしました。彼の姓は直であり、後に贈られた冠位は大錦下です。熊毛は大海人皇子、後の天武天皇の側に立ち、内応したことで歴史に名を刻むことになります。

出自

坂上氏は、渡来系の倭漢氏（東漢氏）の一族に属しています。東漢氏は多くの支族を抱え、特に大和国南部を中心に軍事に関連する活動を行っていました。熊毛の子には宗大がいるとされ、氏の系譜によると、彼は東漢駒子の子孫であり、坂上甲由の子どもとされています。父の甲由は大和国高市郡にルーツを持つと言われており、熊毛自身もこの地域に関連があると考えられています。

経歴

壬申の乱が勃発した際、熊毛は倭京の留守司に就任していました。倭京は当時の都と異なり、近江に存在した別の都を指します。『日本書紀』の記録にも彼が留守司であったことが記されており、同時期に高坂王が存在していたと推測され、彼はおそらく高坂王の同僚、あるいは部下の立場にあったと思われます。

672年の6月下旬、大海人皇子が兵を挙げると、近江に滞在していた大友皇子（後の弘文天皇）は、倭京の留守司に軍を派遣するよう指示を出しました。高坂王は、穂積百足、穂積五百枝、物部日向と共に軍の準備を始めました。しかし一方で、大海人皇子の支持に回る決意をした大伴吹負が、兵を集めることを目指して熊毛に相談しました。結果、熊毛と共に、数名の漢直たちに内応を呼びかけることになりました。

6月29日、秦熊が使者のふりをして足を運び、「高市皇子が不破から来ている」との偽情報を流しました。この報に驚いた兵士たちは逃げ出しました。その後、数十騎が熊毛と共に敵陣に侵入すると、内応していたため大伴吹負は容易に指揮権を手中に収めました。これにより、彼は壬申の乱での成功を収め、軍の主導権を握ることになったのです。

その後、霊亀2年（716年）4月8日には、熊毛の業績を称える意味で、彼の子である坂上宗大に田の授与が行われました。さらに天平宝字元年（757年）12月9日には、太政官が坂上直熊毛の功績を認め、功田6町を2世代にわたって受け継ぐことを決定しました。生前に熊毛も6町の功田を受け取っており、その後、宗大にこの功田が引き継がれたと考えられています。

参考文献

この情報に関しては、『日本書紀』や『続日本紀』の校訂による資料が参考にされており、歴史の正確な理解のために非常に重要な役割を果たしています。また、学術論文においても彼の存在と影響が語られています。特に、直木孝次郎による「壬申の乱と坂上氏」という論考は、彼の人生と業績を掘り下げる上での重要な資料となっています。

坂上熊毛は、壬申の乱における内応によってその名を歴史に刻み、後世に語り継がれる人物となりました。

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