東漢氏

東漢氏（やまとのあやうじ）とは

東漢氏は、古代日本に渡来した氏族の一つで、「倭漢氏」とも記されます。彼らは、応神天皇の時代に中国から渡来したとされる阿知使主を祖とする帰化系氏族です。東漢氏は、単一の氏族ではなく、複数の小氏族からなる複合氏族であり、渡来してきた人々が共通の祖先伝承のもとにまとまっていったと考えられています。また、半島系の土着民が権威を示すために東漢氏を名乗ったケースも多かったとされています。

渡来の経緯

『日本書紀』によると、応神天皇20年9月、倭漢直の祖である阿知使主とその子の都加使主が、17県の党類を率いて日本に渡来したとされています。また、『続日本紀』には、阿智王が朱、李、多、皀郭、皀、段、高の七姓の漢人と共に渡来したと記されています。さらに、『古事記』には、「秦造の祖、漢直の祖」が渡来したとあり、秦氏と並んで有力な渡来氏族であったことが伺えます。

漢氏と東漢氏・西漢氏

漢氏（あやうじ）は、東漢氏（倭漢氏）と西漢氏（河内漢氏）の二つに分かれます。西漢氏は王仁の後裔を称し、東漢氏とは同族ですが、氏を異にしています。また、後に渡来した新漢人（いまきのあやひと）も存在します。阿知使主の末裔である漢氏は、飛鳥に近い檜隈を拠点とし、大和に居住した漢氏は東漢氏となりました。一方、河内に本拠を置いた漢氏は西漢氏となりました。両氏とも織物工芸に長けていたため、「漢」と書いて「アヤ」と読ませるようになったとされています。

『続日本紀』によると、東漢氏は、神牛に導かれて中国漢末の戦乱を逃れ、帯方郡に移住した後、日本の聖王の存在を知って渡来したとされています。しかし、系譜から判断すると、東漢氏が漢王朝との関係を創作した可能性も指摘されています。また、東漢氏とは直接関係ありませんが、百済からは五経博士として漢高安茂が派遣され、以前の博士であった段楊爾との交代が申し入れられています。

氏族の特徴

東漢氏は、土木建築や織物の技術に長けていたことが記録から伺えます。一族の東文氏は、7世紀から8世紀にかけて内蔵省や大蔵省などの官人を輩出しています。また、軍事力にも優れており、蘇我氏の門衛や宮廷の警護を担当していました。『肥前国風土記』によると、602年の新羅征討計画の際には兵器の製作を担当しました。崇峻天皇暗殺事件では、東漢駒が実行犯となったことでも知られています。蘇我氏の与党でしたが、壬申の乱では蘇我氏と袂を分かち、生き残った東漢氏は、奈良時代以降も武人を輩出し、平安時代初期には坂上氏が蝦夷征討で活躍しました。

後裔

阿智使主の直系の子孫は、天武天皇から「忌寸」の姓を賜り、他の氏族と区別されるようになりました。また、東漢氏は、坂上氏、書氏、民氏、池辺氏、荒田井氏などの直姓氏族に分かれました。八色の姓では忌寸姓に改められました。8世紀から9世紀には、坂上氏が台頭し、宿禰・大宿禰の姓を賜りました。

坂上氏

東漢氏の宗家ともいえる系統は、坂上直志拏の兄である東漢直山木です。しかし、曾孫である東漢駒が蘇我馬子の指示で崇峻天皇を暗殺し、後に馬子に殺害されたことで、東漢氏の宗家は没落しました。

まとめ

東漢氏は、古代日本の社会において、政治、経済、文化など、多方面にわたり大きな影響を与えた渡来系氏族です。彼らの技術力と軍事力は、古代日本の発展に大きく貢献しました。また、その子孫は、様々な氏族に分かれて、後の時代にも活躍しました。

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