坂田新

坂田 新

日本の古典中国文学者、坂田 新（さかた しん）は、1949年6月28日に生まれ、2009年12月23日に逝去しました。専門は古典中国文学であり、生涯を通じてこの分野の研究と教育、普及に尽力しました。

坂田氏は、早稲田大学文学部中国文学科で学び、1973年に卒業しました。さらに同学の大学院博士課程へ進学し、1978年に単位取得退学しています。その後、教育者としての道を歩み始め、愛知県立大学で助教授、そして教授を務めました。その研究活動の一環として、香港大学での客員教授も経験しており、国際的な視点からの研究交流も行いました。

晩年は愛知文教大学へ移り、教授として教壇に立ちました。特に中国語の基礎を習得した学生向けの演習を担当し、古典を通じて言語や文化への理解を深める指導を行いました。教育者としての実績を重ね、同大学の学長に就任しました。しかし、学長在職中の2009年12月23日、胃癌のため惜しまれつつも逝去されました。

坂田氏が学長を務めていた当時、副学長であった岸雅裕氏（地域文化研究、日本文化史を専門とし、関連演習を担当）が、病気治療のため2006年度の途中から休養していました（岸氏は後に2012年3月30日に逝去）。このような状況下で坂田氏が逝去したため、学長の後任人事が課題となりましたが、最終的に古文書の教鞭を執っていた増田孝氏（現在は愛知東邦大学に所属）がその職を引き継ぎました。

坂田新氏の業績は多岐にわたりますが、特に著書としてその研究成果や教育への情熱が結実しています。初期の詩集『白雲悠々 天』を塔文学会から1970年に刊行して以来、漢詩や中国古典に関する著作を数多く発表しました。

『漢詩作法講話』（本の友社、1989年）では、漢詩の作り方に関する丁寧な解説を行い、愛好家に向けた実践的な手引きを提供しました。
『理想への意志』（松浦友久編、東方書店、1990年）に「心象紀行：漢詩の情景」を寄稿し、漢詩が描く情景と内面世界を探求しました。
『江戸漢詩選 第4巻 志士』（岩波書店、1995年）では、幕末などの激動期に活躍した藤田東湖、佐久間象山、吉田松陰、橋本左内、西郷隆盛といった志士たちの漢詩を選び、その思想や情熱を読み解きました。
『漢詩で詠む中国歴史物語 1 春秋戦国時代〜漢時代』（世界文化社、1996年）では、中国の壮大な歴史を、その時代に詠まれた漢詩を通して紹介し、文学と歴史を結びつける試みを行いました。
『故事ことわざで読む論語』（小学館ジェイブックス、1997年）では、『論語』に由来する故事やことわざを手がかりに、古典の教えを分かりやすく解説しました。
編著である『中国歴史紀行 遥かなる歴史、勇躍する英傑、広大な風土をたどる第1巻』（学習研究社、1997年）では、中国各地の歴史的な場所や人物、豊かな自然を巡る紀行文を通じて、読者を壮大な中国世界へと誘いました。
* 『論語紀行』（日本放送出版協会・NHKライブラリー、2000年）は、NHKの番組に関連した著作であり、『論語』の舞台や背景を旅する形式で、その思想や魅力を深掘りしました。

これらの著作は、専門家だけでなく、一般の読者にも中国古典文学、特に漢詩や『論語』の世界を分かりやすく伝えることを意図しており、その普及に大きく貢献しました。教育現場での指導に加え、これらの執筆活動を通して、中国古典の深い理解と魅力を多くの人々と共有しようと努めた古典中国文学者でした。

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