松浦友久

松浦友久（まつうら ともひさ）

松浦友久（1935年9月17日 - 2002年9月26日）は、日本の著名な古典中国文学者であり、特に漢文学史、唐詩、そして日中比較詩学を専門としていました。

生涯

静岡県浜松市出身。1952年に松浦家と養子縁組を結び、以降は松浦姓を名乗りました。早稲田大学に進学し、1958年に第一文学部国文学専修を卒業。その後、早稲田大学大学院文学研究科博士課程（国文学科）に進み、単位を取得しました。

1965年、早稲田大学文学部の専任講師となり、1968年には助教授、1975年には教授に昇任しました。1978年には、『李白研究 抒情の構造』で文学博士の学位を取得。李白研究における彼の深い洞察と分析は、学界に大きな影響を与えました。

2002年9月26日、早稲田大学文学部教授在職中に悪性リンパ腫のため逝去されました。没後には、彼の業績をまとめた著作選が刊行され、その学問的遺産は今も多くの研究者に参照されています。

業績

松浦友久は、李白をはじめとする唐詩の研究において、数多くの重要な業績を残しました。彼の研究は、詩の表現や構造だけでなく、詩人の心情や時代背景にも深く踏み込んだものであり、漢文学研究に新たな視点をもたらしました。また、日中比較詩学の分野でも、日本の古典文学との比較を通じて、中国詩の特質を明らかにする研究を行いました。

著書には、『李白研究 抒情の構造』、『唐詩の旅 黄河篇』、『詩語の諸相 唐詩ノート』などがあります。これらの著作は、彼の研究成果を広く社会に伝えるとともに、漢詩への関心を高める役割を果たしました。また、『漢詩 美の在りか』は、漢詩の美学について論じたもので、一般読者にもわかりやすく漢詩の魅力を伝えています。

著書一覧

李白 詩と心象 社会思想社・現代教養文庫 1970／社会思想社 1984
李白研究 抒情の構造 三省堂 1976
唐詩の旅 黄河篇 現代教養文庫 1980.3
詩語の諸相 唐詩ノート 研文出版 1981.4
唐詩 心のリズム 社会思想社 1984.5
中国詩歌原論 比較詩学の主題に即して 大修館書店 1986.4
リズムの美学 日中詩歌論 明治書院 1991.3
李白伝記論 客寓の詩想 研文出版 1994.9
『万葉集』という名の双関語 日中詩学ノート 大修館書店 1995.4
詩歌三国志 新潮選書 1998.10
漢詩 美の在りか 岩波新書 2002.1
中国詩文の言語学 対句・声調・教学 研文出版 2003.9 (著作選 1)
陶淵明・白居易論 抒情と説理 研文出版 2004.6 (著作選 2)
日本上代漢詩文論考 研文出版 2004.10 (著作選 3)
中国古典詩学への道 研文出版 2005.5 (著作選 4)

共編著・注釈

松浦友久は、研究活動のかたわら、後進の育成にも力を注ぎました。共編著や注釈書を通じて、漢詩の解釈や鑑賞の普及に貢献するとともに、学生たちの学習を支援しました。

漢詩の解釈と鑑賞 唐詩を中心に 村山吉廣共著 有精堂出版 1968.5 (国文解釈と鑑賞叢書)
中国の名詩鑑賞 6 中唐 田口暢穂共編 明治書院 1976
わかる国語I・II漢文 松原朗共著 三省堂 1987.1 (ビーコン基礎)
中国の都城 2 長安・洛陽物語 悠久たり王城の地 植木久行共著 集英社 1987.7
唐詩解釈辞典 校注 大修館書店 1987.11
はじめて読む唐詩 5-6 田口暢穂共編 明治書院 1998
漢詩の事典（編著）植木久行・宇野直人・松原朗著 大修館書店 1999.1
唐詩解釈辞典 続 大修館書店 2001.4
中国詩選3 唐詩 現代教養文庫 1972 / 文元社 2004
中国名詩集 美の歳月 朝日文庫 1992.8 / ちくま学芸文庫 2024.11 - 赤井益久解説
大月光浴 Oriental moon 小学館 1996.4 - 月を詠んだ漢詩の和訳
李白詩選 岩波文庫 1997.1、ワイド版 2001.1
杜牧詩選 植木久行共編訳 岩波文庫 2004.11

記念論集

彼の死後、門下生や同僚の研究者たちによって、松浦友久の業績を記念する論集が刊行されました。この論集は、彼の学問に対する情熱と、彼が漢文学研究に与えた影響の大きさを物語るものです。

* 中國古典文學論集 松浦友久博士追悼記念　同中國古典文學論集編、研文出版 2006.3

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