坐剤

坐剤（ざざい）・坐薬（ざやく）についての詳細

坐剤、または坐薬は、肛門や膣に入れて使用する医薬品の一種です。これは、医薬品成分が基剤に均等に混ぜ込まれ、特定の形状に成型された半固形の外用剤です。体温の影響で溶けたり軟化したりし、あるいは分泌液によって徐々に放出されることが特徴です。

製剤の特徴

坐剤は、通常、油脂性または親水性の基剤を利用して製造されます。必要に応じて乳化剤や懸濁化剤が添加され、それを有効成分と混合し、適した形状に成形して作られます。調製方法には、溶解法、冷圧法、手工法があります。日本の常用漢字には「坐」の字が含まれていないため、「座」という字を使って表記されることもあります。国際的には、英語の「suppository」に由来しています。

種類

坐剤は主に適用部位に応じて分類され、以下のような種類があります。

1. 肛門坐剤

肛門坐剤は、主に局所作用を目的としたものと、全身作用を期待する薬剤に分かれます。局所用途の例には痔疾に対するものがありますが、解熱鎮痛消炎剤として全身的に効果が期待できるものも存在します。形は一般的に挿入しやすい紡錘形で、重さは1～3グラム、長さは3～4センチ程度です。

2. 膣坐剤

膣坐剤は、トリコモナスやカンジダ症の治療に使用されるものです。また、経口経路で分解されやすいプロゲステロンなどのホルモン製剤も含まれています。最近では、肛門坐剤と同様の形状の製品が多く流通しています。

3. 尿道坐剤

尿道坐剤はMUSE（Medical Urethra System）として知られ、ED治療に使用されるアルプロスタジルを含む医薬品です。この治療法は日本ではまだ未承認です。

基剤による分類

坐剤の基剤は、常温では固体でありながら、肛門や膣内で速やかに溶解して成分を放出する必要があります。

疎水性基剤

主にカカオ脂やウイテプゾール、ハードファットを使用しており、体温でおおよそ10分で融解します。これにより粘膜を保護し、主に局所用途で用いられますが、夏場は軟化や酸敗が懸念されるため、適切な保存が必要です。

親水性基剤

水溶性の親水性基剤は体液を吸収し、速やかに有効成分を放出します。これにより、全身作用の坐薬に多く遣われます。主な材料にはポリエチレングリコール（マクロゴール）やグリセロゼラチンがあります。

使用上の注意

異なる基剤で作られた坐剤を使用する際は、吸収を妨げることがあるため、水溶性基剤を先に使用し、一定の時間を空けてから油脂性基剤を挿入することが推奨されます。

坐剤の利点

坐剤使用の利点には、以下の点が挙げられます：

• - 肝臓への負担が軽い：肛門下部からの吸収により初回通過効果が少ない。
• - 迅速な効果発現：経口投与に比べ、全身血流に到達する時間が短い。
• - 消化器系の刺激が少ない：胃腸を通過しないため、不快感が軽減。
• - 使用が簡便：特に赤ちゃんや嚥下困難な患者にとって有用です。
• - 味や臭いが気にならない：服用に伴う苦痛がありません。

類似の製剤としては、膣錠や注入軟膏などがあります。坐剤は、適切な使用方法を理解し守ることで、医療現場で非常に有効な療法の一つと言えます。

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