堀川用水

堀川用水とは



堀川用水は、福岡県朝倉市を流れる農業用水路で、筑後川右岸から取水しています。旧朝倉町と甘木市にまたがる広大な水田、計664ヘクタールを潤しており、地域農業に欠かせない存在です。床島用水、大石長野用水、袋野用水とともに「筑後川四大用水」と称され、その中でも最も古く開削された用水路です。現在は山田土地改良区が管理を行っています。

歴史



1663年寛文3年)、福岡藩士の木村長兵衛と魚住五郎右衛門によって着工され、翌年に完成しました。取水口は現在の朝倉市山田にある山田です。水路の途中には分岐点があり、そこから北線と南線に分かれます。北線は当初からの堀川用水で、南線は1764年明和元年)に古賀十作義重によって開削された新堀川です。

江戸時代、各藩は新田開発を推進していましたが、旧朝倉町一帯は水不足や洪水に悩まされていました。堀川用水の建設により、この地域は穀倉地帯へと変貌を遂げました。1662年の干ばつを契機に、福岡藩は安定した稲作のため用水路建設を決定。当初の取水口は現在地より下流にありましたが、土砂の堆積のため、1722年に現在の山田の隣にある岩盤をくり抜いて切貫水門が設けられました。その後、水量の不足から、1759年には水門が拡大、さらに新堀川が開削され、灌漑面積は大幅に増加しました。

1787年、古賀百工は山田の全面改修を提唱し、現在の石畳の絵図を作成。1790年に大規模な改修工事が完了し、堀川用水はさらに多くの農地を潤すことができるようになりました。幾度かの洪水被害に見舞われましたが、その都度修復され、現在もその姿を留めています。近年では、2017年の九州北部豪雨で水車群が被害を受けましたが、その後復旧しています。

水車と文化遺産



堀川用水沿いには、日本最古の実働する水車が残っています。三連水車1基、二連水車2基があり、「朝倉の三連水車」として知られ、昭和62年度手づくり郷土賞を受賞しています。また、1990年には用水路とともに「堀川用水及び朝倉揚水車」として国の史跡に指定されました。さらに、2006年には農林水産省の疏水百選に、2012年には土木学会土木学会選奨土木遺産に、2014年には国際かんがい排水委員会の「かんがい施設遺産」に選定・登録されています。2017年には、「堀川の環境を守る会」と「山田土地改良区」が、国土交通省手づくり郷土賞大賞を受賞しました。

山田



山田は、筑後川にある石で、傾斜床式石張としては全国唯一のものです。の前壁は斜めに配置され、水圧を緩和する治水構造となっています。また、河川水を導流するための高低差のある構造や、舟通し、魚道も備えています。その構造は、アフガニスタンでの灌漑事業のモデルにもなりました。

水門と水神



切貫水門は岩盤を掘って作られたトンネルで、サイフォンのような構造で土砂の堆積を防いでいます。水門の上には水神社があり、毎年6月には通水式が行われます。

朝倉揚水車



朝倉の揚水車は、およそ1760年代から1780年代に設置されたもので、日本最古の実働する水車です。菱野水車、三島水車、久重水車があり、合計約35ヘクタールの水田を灌漑しています。水車は地元の職人により5年ごとに作り替えられ、その技術が継承されています。

年表



1663年:堀川用水の開削工事開始
1664年:堀川用水竣工
1722年:取水口を現在地に移設
1759年:切貫水門を拡大
1764年:新堀川開削、灌漑面積拡大
1789年:菱野の三連水車完成
1790年:山田完成
1913年:堀川土木組合設立
1955年:山田土地改良区設立
1981年:山田大改修
1990年:国の史跡に指定
2006年:疏水百選に認定
2014年かんがい施設遺産に登録

交通アクセス



久大本線筑後吉井駅から車で10分
西鉄天神大牟田線朝倉街道駅からバス
大分自動車道朝倉インターチェンジから車で5分


関連情報



床島
中村哲


外部リンク



水土里ネット山田
文化遺産データベース 堀川用水及び朝倉揚水車
国土交通省九州農政局 山田
疏水名鑑 疏水百選【福岡県】堀川用水

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