塩尻峠

塩尻峠：歴史と自然が織りなす絶景の峠

地理と地形

塩尻峠は、長野県塩尻市と岡谷市の境に位置し、諏訪盆地と松本盆地を隔てる重要な峠です。かつては中山道がこの峠を越え、人々の往来を支えていました。現在は、国道20号がその役割を引き継いでいますが、旧道には当時の面影が残っています。

峠の地形は、岡谷側が急峻で、岡谷市街地から標高1,012mの最高点（国道20号上）まで一気に駆け上がります。一方、塩尻側は比較的緩やかな傾斜となっています。このため、国道20号には岡谷側と塩尻側の両方に登坂車線が設けられています。

地元では「塩嶺峠（えんれいとうげ）」とも呼ばれており、この名称は、かつてこの場所にあったとされる塩嶺山（火山）に由来すると考えられています。塩嶺の名は、塩尻峠直下の「塩嶺トンネル」（中央本線・長野自動車道）にも使用されています。

分水嶺としての役割

塩尻峠は、中央分水嶺の峠の一つでもあります。岡谷側に降った雨は天竜川へと流れ、太平洋に注ぎます。一方、塩尻側に降った雨は犀川に合流し、信濃川（千曲川）を経て日本海へと流れます。

歴史的な出来事

1880年（明治13年）には、明治天皇が巡幸の際に塩尻峠を通過し、頂上付近に御野立場が設けられました。後日、この地には記念碑が建立されています。1947年（昭和22年）には、昭和天皇が戦後巡幸で塩尻峠を訪れ、この記念碑を訪れています。なお、峠へ向かう途中、自動車が急な坂道を登れず、途中から徒歩で進まれたというエピソードも残っています。

美術における塩尻峠

塩尻峠は、その美しい景観から、多くの芸術家にも愛されてきました。浮世絵師の歌川広重は、連作『冨二三十六景』の一枚「信濃塩尻峠」で、峠越しに見える諏訪湖と、その先にそびえる富士山を描いています。

また、渓斎英泉の『木曽街道六十九次』には、「木曽街道塩尻峠諏訪ノ湖水眺望」が描かれています。この作品では、結氷した諏訪湖の氷上を歩く人々や、対岸に浮かぶ高島城、遠景には八ヶ岳と富士山が描かれています。特に、英泉の作品は、実際の景色に忠実な構図であるため、現代の写真と並べて紹介されることも多く、地元では広重の作品よりも広く知られています。

アクセス

塩尻峠へのアクセスは、塩尻駅から塩尻市地域振興バス「みどり湖・東山線」を利用し、約25分で終点の「御野立口」に到着します。そこから徒歩で峠へ向かうことができます。

その他の情報

塩尻峠周辺には、塩尻[[峠の戦い]]に関する史跡や、塩嶺、塩嶺御野立記念祭など、様々な歴史や文化に関連するスポットがあります。また、勝弦や日本の峠一覧といった関連情報も参考にできます。

かつては、松本電鉄やJRバスの路線が塩尻峠を越えていましたが、現在は廃止されており、峠を越える路線バスは運行していません。

塩尻峠は、歴史と自然が織りなす魅力的な場所であり、訪れる人々に深い感動を与えてくれます。

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