塩屋町 (高松市)
香川県高松市中心部、市役所から約0.8kmの場所に位置する塩屋町は、高松市の町丁の一つです。旧長尾街道の一部にあたる県道160号高松港栗林公園線を挟んで両側に広がる両側町で、古くからの町筋に沿って南北に長い形状をしています。北側は大工町、南側はことでん志度線の線路北側付近までが町域となっており、高松市の都心部の一角を形成しています。
現在の町並みは、主に新しいマンションや企業のオフィスビルが占めていますが、かつて旧街道沿いに発達したという特性から、建て替えられる以前に存在した古い商店や民家も未だに残っており、現代的な建物と歴史を感じさせる建物が混在する風景が見られます。町内に鉄道駅は存在しませんが、北に片原町駅、東に今橋駅、南に瓦町駅があり、いずれも徒歩圏内にあるため、鉄道を利用する上での利便性は高いと言えます。加えて、町の南部を国道11号が横断しており、車でのアクセスも良好で、総じて交通の便が開けた地域です。
「塩屋町」という町名の由来は、この地域でかつて製塩業が盛んだったことに求められます。町が成立したとされる寛永年間（1624年～1643年）頃の地図には、付近に塩田や塩釜が描かれており、製塩との関わりが示唆されています。江戸時代には高松城下の町の一つとして栄え、一丁目から三丁目までが存在しました。北側の通町から続く町筋に沿って発展し、当時の地図では「通町筋」に含められ、現在の井口町や新通町にあたる範囲が「塩やき町」と記されていました。江戸時代には、袋屋勘四郎（後藤漆谷）や菊屋逸三といった有力な商人たちの邸宅や多くの商店が軒を連ね、城下町の商業地として賑わいました。町の最南端、出晴と呼ばれた場所は城下町への出入口にあたり、外部からの侵入を防ぐための番所と大木戸が設置されていました。ここは当時から三つの道と二つの水路が交差する交通の要衝であり、近くには現在の八坂神社（当時は祇園社）が鎮座していました。
明治時代に入ると、塩屋町は政治・文化の面でも動きが見られます。自由民権運動に関わる結社「博文社」や「高松立志社」の拠点が置かれました。また、文化娯楽の場として、八坂神社境内に芝居小屋ができ、後に出晴に春長楽、明治中期には歌舞伎座歓楽座が開館するなど、演劇などが楽しめる場所としても機能しました。教育面では、県による小学校経費補助の廃止を受け、義方小学校、啓蒙小学校といった私立学校が設立され、後に高松第二小学校が置かれました。1890年（明治23年）2月15日には、高松城下に市制が施行され、塩屋町は高松市の一部となりました。
近代における交通網の発達は、町の性格を大きく変えました。高松市の玄関口に近いという地理的な特徴から、1898年（明治31年）には出晴と長尾を結ぶ乗合馬車が運行を開始しました。鉄道網の整備も進み、1912年（明治45年）4月30日には高松電気軌道（現在のことでん長尾線）の起点駅として、現在の瓦町駅志度線のりば付近に出晴駅が開業しました。さらに1913年（大正2年）10月15日には東讃電気軌道（現在のことでん志度線）も延伸され、現在の長尾線駅より北側に新たな出晴駅が開業しました。これにより、塩屋町の出晴は、周辺農村部と高松市街を結ぶ交通の要衝としての地位を確立し、その名が知られるようになりました。しかし、その後に琴平電鉄（現在のことでん琴平線）が延伸し、現在の瓦町駅が開業すると、志度線との乗り換えの中心がそちらに移り、塩屋町の出晴駅周辺は以前ほどの賑わいを失うことになりました。
商業や公共の施設も設けられました。1919年（大正8年）には高松商業銀行の出張所が開設され、後に百十四銀行の支店として、2001年まで場所を変えながらも80年以上にわたり営業を続けました。また、1940年（昭和15年）には市立塩屋町診療所が開所し、内科・小児科の診療を行いましたが、太平洋戦争末期の高松空襲により焼失しました。1945年（昭和20年）7月4日未明の高松空襲では、町域のほぼ100%が焼失するという壊滅的な被害を受けました。この空襲の影響で、町内にあった出晴駅は同月中に廃止され、機能は瓦町駅に統合されました。
戦後の復興期には、空襲で壊滅した高松市中心部で行われた大規模な土地区画整理事業（戦災復興土地区画整理事業）の対象となり、塩屋町でも道路の拡張や改良が行われました。この事業の完了に伴い、1965年（昭和39年）に地番整理が実施され、町域の一部が末広町、福田町、塩上町、御坊町などに編入されるとともに、周辺の町の一部が塩屋町に組み入れられるといった町域の変更が行われました。
近年の人口は変動が見られますが、2020年の国勢調査では218人（男117人、女101人）、125世帯が暮らしています。町内には、クワヤ病院、専門学校穴吹動物看護カレッジ、高松北警察署塩屋町交番、高松塩屋町郵便局、岡部循環器内科医院などの施設が立地しています。都市計画法に基づく用途地域は全域が商業地域に指定されており、容積率は国道11号沿いが500%、それ以外が400%となっています。教育面では、町内全域が高松第一小学校・中学校（小中一貫校）の校区に属しています。
塩屋町は、製塩業に由来する古い歴史を持ち、江戸時代には城下町の重要な一角として栄え、近代には交通の要衝として発展しました。戦災による壊滅からの復興を経て、現在は高松市の都心部において、多様な機能を持つ町としてその姿をとどめています。
現在の町並みは、主に新しいマンションや企業のオフィスビルが占めていますが、かつて旧街道沿いに発達したという特性から、建て替えられる以前に存在した古い商店や民家も未だに残っており、現代的な建物と歴史を感じさせる建物が混在する風景が見られます。町内に鉄道駅は存在しませんが、北に片原町駅、東に今橋駅、南に瓦町駅があり、いずれも徒歩圏内にあるため、鉄道を利用する上での利便性は高いと言えます。加えて、町の南部を国道11号が横断しており、車でのアクセスも良好で、総じて交通の便が開けた地域です。
「塩屋町」という町名の由来は、この地域でかつて製塩業が盛んだったことに求められます。町が成立したとされる寛永年間（1624年～1643年）頃の地図には、付近に塩田や塩釜が描かれており、製塩との関わりが示唆されています。江戸時代には高松城下の町の一つとして栄え、一丁目から三丁目までが存在しました。北側の通町から続く町筋に沿って発展し、当時の地図では「通町筋」に含められ、現在の井口町や新通町にあたる範囲が「塩やき町」と記されていました。江戸時代には、袋屋勘四郎（後藤漆谷）や菊屋逸三といった有力な商人たちの邸宅や多くの商店が軒を連ね、城下町の商業地として賑わいました。町の最南端、出晴と呼ばれた場所は城下町への出入口にあたり、外部からの侵入を防ぐための番所と大木戸が設置されていました。ここは当時から三つの道と二つの水路が交差する交通の要衝であり、近くには現在の八坂神社（当時は祇園社）が鎮座していました。
明治時代に入ると、塩屋町は政治・文化の面でも動きが見られます。自由民権運動に関わる結社「博文社」や「高松立志社」の拠点が置かれました。また、文化娯楽の場として、八坂神社境内に芝居小屋ができ、後に出晴に春長楽、明治中期には歌舞伎座歓楽座が開館するなど、演劇などが楽しめる場所としても機能しました。教育面では、県による小学校経費補助の廃止を受け、義方小学校、啓蒙小学校といった私立学校が設立され、後に高松第二小学校が置かれました。1890年（明治23年）2月15日には、高松城下に市制が施行され、塩屋町は高松市の一部となりました。
近代における交通網の発達は、町の性格を大きく変えました。高松市の玄関口に近いという地理的な特徴から、1898年（明治31年）には出晴と長尾を結ぶ乗合馬車が運行を開始しました。鉄道網の整備も進み、1912年（明治45年）4月30日には高松電気軌道（現在のことでん長尾線）の起点駅として、現在の瓦町駅志度線のりば付近に出晴駅が開業しました。さらに1913年（大正2年）10月15日には東讃電気軌道（現在のことでん志度線）も延伸され、現在の長尾線駅より北側に新たな出晴駅が開業しました。これにより、塩屋町の出晴は、周辺農村部と高松市街を結ぶ交通の要衝としての地位を確立し、その名が知られるようになりました。しかし、その後に琴平電鉄（現在のことでん琴平線）が延伸し、現在の瓦町駅が開業すると、志度線との乗り換えの中心がそちらに移り、塩屋町の出晴駅周辺は以前ほどの賑わいを失うことになりました。
商業や公共の施設も設けられました。1919年（大正8年）には高松商業銀行の出張所が開設され、後に百十四銀行の支店として、2001年まで場所を変えながらも80年以上にわたり営業を続けました。また、1940年（昭和15年）には市立塩屋町診療所が開所し、内科・小児科の診療を行いましたが、太平洋戦争末期の高松空襲により焼失しました。1945年（昭和20年）7月4日未明の高松空襲では、町域のほぼ100%が焼失するという壊滅的な被害を受けました。この空襲の影響で、町内にあった出晴駅は同月中に廃止され、機能は瓦町駅に統合されました。
戦後の復興期には、空襲で壊滅した高松市中心部で行われた大規模な土地区画整理事業（戦災復興土地区画整理事業）の対象となり、塩屋町でも道路の拡張や改良が行われました。この事業の完了に伴い、1965年（昭和39年）に地番整理が実施され、町域の一部が末広町、福田町、塩上町、御坊町などに編入されるとともに、周辺の町の一部が塩屋町に組み入れられるといった町域の変更が行われました。
近年の人口は変動が見られますが、2020年の国勢調査では218人（男117人、女101人）、125世帯が暮らしています。町内には、クワヤ病院、専門学校穴吹動物看護カレッジ、高松北警察署塩屋町交番、高松塩屋町郵便局、岡部循環器内科医院などの施設が立地しています。都市計画法に基づく用途地域は全域が商業地域に指定されており、容積率は国道11号沿いが500%、それ以外が400%となっています。教育面では、町内全域が高松第一小学校・中学校（小中一貫校）の校区に属しています。
塩屋町は、製塩業に由来する古い歴史を持ち、江戸時代には城下町の重要な一角として栄え、近代には交通の要衝として発展しました。戦災による壊滅からの復興を経て、現在は高松市の都心部において、多様な機能を持つ町としてその姿をとどめています。
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