塩嶺トンネル

塩嶺トンネル

塩嶺トンネルは、長野県岡谷市と塩尻市の間にある、塩嶺を貫通するJR東日本中央本線のトンネルです。全長は5,994メートルで、全区間が複線となっています。このトンネルは、中央本線の岡谷駅とみどり湖駅の間に位置しており、中央本線の輸送を大きく変える役割を果たしました。

開通前の状況

トンネル開通前の中央本線は、岡谷駅から塩尻駅の間で、辰野駅を経由するルートを通っていました。このルートは、天竜川と横川川に沿って南下する迂回路で、約28kmの距離がありました。しかし、塩嶺トンネルの開通により、岡谷駅と塩尻駅間の距離は約12kmに短縮され、所要時間も大幅に短縮されました。特に、特急「あずさ」では、新宿駅 - 松本駅間の所要時間が約20分短縮されました。

建設の歴史

塩嶺ルートの構想は中央本線建設当初からありましたが、当時の技術では困難な課題が複数ありました。まず、トンネル両側の高度差が大きく、全長6kmにも及ぶ片勾配のトンネルを直線的に掘削することが困難でした。また、蒸気機関車での運行を考えると、連続勾配のトンネルは乗務員の窒息事故の危険性がありました。そのため、中央本線は辰野駅を経由するルートで建設されました。この旧線は、地元出身の代議士、伊藤大八の働きかけにより建設されたため、「大八廻り」と呼ばれることもあります。

新線建設の背景

1970年代に入ると、中央本線の旅客需要が急増し、スピードアップのために塩嶺ルートによる路線短絡が検討されました。当初は下諏訪 - 塩尻のルートも検討されましたが、最終的に乗降客の多い岡谷駅を通る現行ルートに決定しました。しかし、岡谷市内の用地問題の解決に時間を要し、新線区間が開通したのは1983年になりました。

開通後の影響

新線開通により、多くの優等列車や松本以南が快速化された急行「天竜」の中央東線発着編成は新線経由となりました。一方、辰野駅を経由する優等列車は飯田線直通の急行「アルプス」・「こまがね」の3往復のみとなりましたが、1986年には飯田線直通急行も廃止されました。これにより、旧線のうち岡谷駅 - 辰野駅間は事実上飯田線と一体化し、辰野駅 - 塩尻駅間はローカル線となりました。

2002年には、唯一旧線を走っていた夜行急行「アルプス」が廃止され、中央東線の優等列車は臨時列車を除き、全て塩嶺トンネル経由となりました。

トンネル建設の困難

トンネル掘削工事は、1974年2月に塩尻側から着手されましたが、掘削中に毎分10トンを超える異常出水が発生し、工事は難航しました。最大では50トン/分を超える出水もあったと言われています。この異常出水により、トンネル直上にある勝弦地区の簡易水道水源の湧水が減少し、枯渇する事態も発生しました。最終的に、トンネルは1982年4月に全面貫通し、総工費は510億円に達しました。

トンネルの沿革

1974年2月：着工
1982年4月：全面貫通
1983年7月5日：開通
1987年4月1日：国鉄分割民営化に伴い、JR東日本に継承

脚注

関連項目

鉄道と政治
みどり湖駅
丹那トンネル

外部リンク

長山喜則『国鉄中央本線塩嶺トンネルが開通 : 新宿・松本間で22分の短縮』（国会図書館）

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