伊藤大八

伊藤大八（いとう だいはち）

伊藤大八は、1858年12月19日に生まれ、1927年9月10日に没した、明治から昭和初期にかけて活躍した政治家であり実業家です。長野県下伊那郡上殿岡村（現在の飯田市上殿岡）の出身で、東京で中江兆民の仏学塾で学んだ後、陸軍幼年学校の通訳などを経験しました。

政治家としての活動

1890年（明治23年）の第1回衆議院議員総選挙で初当選し、衆議院議員として5期を務めました。所属政党は、自由党、憲政党、政友会と変遷しましたが、その間、逓信省鉄道局長（1898年／明治31年）や政友会幹事長（1910年／明治43年）などの要職を歴任しました。

1913年（大正2年）には、政友会総裁の原敬の意向により南満州鉄道株式会社（満鉄）の副総裁に就任しましたが、創設以来の合議制を廃止しようとしたことが原因で、理事らの激しい抵抗に遭い、総裁や理事と共に罷免されました。また、江ノ島電気鉄道の創立にも関わっています。

大八廻り

1894年（明治27年）、中央本線の誘致を巡り、木曽谷と伊那谷で激しい誘致運動が繰り広げられました。最終的に木曽谷経由での建設が決定されましたが、当時鉄道局長であった伊藤は、せめて伊那谷の一部にでも駅を誘致しようと尽力しました。その結果、当初の塩尻峠経由ではなく、上伊那の辰野を経由するルートに変更することに成功したと伝えられています。この功績から、地元では中央本線の旧線（辰野支線）を「大八廻り」と呼ぶこともあります。ただし、この誘致活動は、我田引鉄の典型例として批判されることもあります。

しかしながら、当時の土木技術や蒸気機関車の性能を考慮すると、塩尻峠を越えるルートは急勾配や急カーブが不可欠であり、予算や工期、運用面から困難であったとの見方もあります。その為、天竜川沿いから辰野へと迂回し、善知鳥峠を通るルートが選択されたとも考えられます。参考までに、総延長4,656mの中央本線笹子トンネルが貫通したのは1902年（明治35年）、総延長9,702mの上越線清水トンネルが貫通したのは1931年（昭和6年）です。当時の技術では、現在のような長大なトンネルの掘削は困難であったことは想像に難くありません。

1983年（昭和58年）に塩嶺トンネルが開通したことにより、辰野を経由する旧中央本線（地元では辰野線と呼ばれます）はローカル線化しましたが、辰野駅が開設されたことは、伊那電気鉄道（現在の飯田線）などの建設にも繋がりました。中央本線誘致の功績を称え、1928年（昭和3年）には、辰野町の下辰野公園に伊藤の胸像が建立されました。

参考資料

『新訂 政治家人名事典 明治～昭和』（2003年、日外アソシエーツ）

関連事項

塩嶺トンネル
辰野駅
東塩尻信号場

外部リンク

国立国会図書館 憲政資料室 伊藤大八関係文書（ＭＦ：飯田市立中央図書館蔵） - リサーチ・ナビ
伊藤大八目録 - 飯田市立図書館

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