境町 (鳥取県)

鳥取県境町（さかえちょう）の歴史と概要

境町は、明治3年（1870年）から昭和29年（1954年）にかけて鳥取県に存在した町です。その短い歴史の中で、境町は様々な変遷を遂げました。本稿では、境町の成立から廃止までの歴史、政治、経済、そしてゆかりのある人物について詳細に解説します。

境町の成立と変遷

明治3年（1870年）10月、境村と上道村の出村である鼻が合併し、新たに境町が誕生しました。明治18年（1885年）には、境町1284番地（現在の栄町、大港神社境内）に境町役場が新築され、後に境小学校東側に移転しました。明治22年（1889年）10月1日の町村制施行により、境町は町制を施行し、正式に境町が発足しました。

明治時代の発展

明治時代、境町は様々な発展を遂げました。明治28年（1895年）には、境台場跡に灯台が設置され、明治35年（1902年）には境-御来屋間に鉄道が開通しました。明治38年（1905年）には境商工会が発足し、明治39年（1906年）には境-舞鶴間に阪鶴丸が就航するなど、交通・経済の発展が著しかったです。明治40年（1907年）には皇太子（大正天皇）が山陰行啓し、明治42年（1909年）には松江･境･美保関間に合同汽船が定期運航を開始しました。明治43年（1910年）には隠岐汽船が境-元山の北鮮航路を開設するなど、海運業も発展しました。

大正・昭和時代の苦難

大正3年（1914年）には、境駅が北へ海岸よりに（現在地へ）延長移転しました。大正5年（1916年）には、国の港湾調査会で境港湾修築が決定され、大正6年（1917年）には皇太子（昭和天皇）が山陰行啓しました。大正8年（1919年）には境駅が｢境港駅｣と改名し、大正13年（1924年）には境警察署が中町に新築移転しました。昭和4年（1929年）には境-米子間にバスが運転を開始しましたが、昭和10年（1935年）1月には境町大火が発生し、338戸の家屋が焼失しました。昭和15年（1940年）には鳥取県立境中学校が開校し、昭和20年（1945年）には軍用船玉栄丸爆発事故が発生しました。そして、昭和29年（1954年）8月、境町は廃町式を迎えました。

境町の政治

境町の政治は、町村長と町村会によって運営されていました。町村長は町村会で選ばれ、町村会の議長も兼ねていました。初期の町村長には、庄屋や戸長の職を経験した者、あるいはその子孫が選ばれていました。町村会の議員も名誉職で、任期は6年、3年ごとの半数改選でした。選挙権、披選挙権は地租あるいは直接国税2円以上の納入者に限定され、厳しい制限選挙でした。

町長一覧

境町長を歴任した人物は以下の通りです。

手島俊甫 (明治23年 - 明治26年)
西村忠義 (明治26年 - 明治31年)
山本熊吉 (明治32年 - 明治33年)
西久平 (明治34年 - 明治37年)
加島恵太郎 (明治38年 - 明治39年、明治41年 - 大正2年)
杉谷卓 (明治39年 - 明治41年)
松下哲成 (大正2年 - 大正4年)
木村虎治郎 (大正4年 - 大正12年、昭和10年 - 昭和11年)
野口清三郎 (大正13年 - 昭和3年)
稲賀龍二 (昭和3年 - 昭和4年)
足立正 (昭和4年 - 昭和9年)
野坂寛治 (昭和9年 - 昭和10年)
景山圭一 (昭和11年 - 昭和16年)
松下道蔵 (昭和16年)
山本亮 (昭和16年 - 昭和21年)
足立民一郎 (昭和22年 - 昭和29年)

境町の経済

境町は、港町として商業が盛んでした。明治4年（1871年）の「市中商売根帳」には、酒造株、質屋、木綿中買、古手中買、小問屋、綿中買、諸品仲買、太物小間物、紺屋職、搗米屋、渡海船頭、宿屋、雑穀荒物など、多種多様な職種が記載されており、当時の商業の盛況を偲ばせます。

地名を付した屋号が多いのも特徴で、越前屋、越後屋、安宅屋、小浜屋、但馬屋、兵庫屋、大阪屋、神戸屋など、全国各地との交流があったことが伺えます。

境町ゆかりの人物

境町出身、あるいはゆかりのある人物として、以下のような人々が挙げられます。

岡田洲二（実業家、政治家）
松本豊（実業家）
加島恵太郎（境町長、鳥取県議会議員）
山本熊吉（境町長、鳥取県会議員）
山本亮（境町長）
足立民一郎（境町長）
景山圭一（境町長、鳥取県会議員）
広島了輔（広島税理士事務所長、鳥取県会議員）
足立正（日本商工会議所会頭、王子製紙社長）
足立龍雄（実業家･足立正の長男 中村屋会長）
黒田正巳（熊本大学名誉教授）
植田正治（写真家）
杉谷代水（文化人）
水木しげる（漫画家）
滝川一穂（医師）
櫻内幸雄（実業家、政治家）
河西力雄（政治家）
藤原銀次郎（実業家、政治家）
* 加藤章（実業家）

まとめ

境町は、明治から昭和にかけての短い期間に存在した町ですが、その歴史は決して平坦なものではありませんでした。港町として栄え、交通・経済の中心地として発展する一方で、大火や戦災といった苦難も経験しました。しかし、その中でたくましく生き抜いた人々の営みは、今もなお語り継がれています。

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